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産科遠いと帝王切開増 岡山大生が妊産婦調査 緊急時リスク回避か

自宅から産科施設までかかる時間と分娩方法(グラフ)

 自宅から産科施設までの距離が遠いほど妊婦の不安は大きく、陣痛を待たずに帝王切開で産む割合が高い―。岡山大医学部保健学科の学生が倉敷、美作など岡山県内5市の妊産婦を対象に行った調査から、こんな傾向が浮かび上がった。医師・施設不足が深刻な県北を中心に、緊急時のリスク回避のために母体への負担が大きい帝王切開が選択されている実態が垣間見える。

 調査方法 岡山大医学部保健学科の溝口祥代さん(22)、田上志保さん(23)ら4年生6人が、昨年9―11月、真庭、新見、備前、美作、倉敷の5市で実施。乳児健診などの際、過去4年間に妊娠・分娩を経験した女性計570人にアンケートした。

 調査で「分娩(ぶんべん)に不安あり」と答えた割合は、自宅から施設までの時間が「二十分未満」の場合で41・1%。これに対し、「一時間以上」は65・0%で、理由も「距離・時間」が35・0%とトップを占めた。

 施設までの時間と分娩方法の関係を見ると、「二十分未満」では陣痛を待っての自然分娩が76・6%を占めたが、「一時間以上」になると50%にとどまった。逆に帝王切開の割合は二十分未満の10・5%に対し、一時間以上は26・1%。このうち、あらかじめ出産日を決めて行う予定帝王切開は二十分未満で7・6%、一時間以上では17・4%に上った。

 市別では、産科施設の多い倉敷市では予定帝王切開が4%なのに対し、施設の少ない県北では真庭市12・5%、美作市11・8%と高かった。

 「医師が少なく、近くに緊急搬送できる拠点施設もない地域では、(時間を要するとリスクが高まる)未熟児や逆子などのケースで、事前に帝王切開を選ぼうとする意識があるのでは」と調査を指導した中塚幹也教授(母子看護学)は推測する。

 地域の産科医療体制に「不満足」と答えた人の割合は、二十分未満だと37・4%なのに対し、一時間以上は69・0%だった。

 中塚教授は「医師不足の解消が現状では見込めないだけに、救急搬送体制の改善や病院のない地域で妊婦健診をするなど、不安を和らげるきめ細かい対策が必要」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年01月24日 更新)

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