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新型インフル病床わずか83床 岡山県内 難しい確保 1550床必要

新型インフルエンザ患者入院用に確保されている病床。感染拡大を防ぐため室内を陰圧状態にできる=岡山市立市民病院

 新型インフルエンザの感染拡大で「パンデミック」と呼ばれる世界的流行が起こった際、岡山県内では一日最大千五百五十の病床が必要とされるのに対し、確実に使用が見込めるのは八十三にとどまっている。最悪の場合、同県内では患者数約三十八万人、死者数は約二千五百人との試算もあり、万全の備えが急がれる。

 「インドネシアでの致死率は実に80%。史上最悪のインフルエンザと言われるスペイン風邪でさえ一けた台だった」。川崎医科大の大内正信教授(ウイルス学)は、新型変異の恐れがある鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)が持つ毒性の強さを警戒する。

 鳥インフルエンザウイルスは東南アジアを中心に人への感染が相次ぎ報告され、インドネシアでは二〇〇五年以降、百二十九人が発症している。

 人での感染を繰り返すうち、より人に感染しやすいウイルスに変化したり、鳥と人のインフルエンザウイルスが交じって新型が現れると考えられ、大内教授は「海外から持ち込まれる可能性は十分ある」と警告する。


日常診療も

 岡山県は〇五年十二月に新型インフルエンザに対する行動計画を策定。同計画に基づき、パンデミック時には県内で千五百五十の病床が必要と試算する。

 ところが、現段階で確実に提供が見込まれるのは、岡山大病院(岡山市)や倉敷中央病院(倉敷市)、津山中央病院(津山市)など感染症専用病床や結核病床を備える計七病院で合わせて八十三床にすぎない。

 六床の提供が見込まれる岡山市立市民病院(岡山市)は最大約四十床を内部の圧力が外部より低い陰圧状態にすることで、ウイルスを閉じ込めることが可能。「全体で約四百床あるが、可能な限り提供したい」と話す。

 ただ、病院側は日常診療との兼ね合いもあり、新型インフルエンザのために多くの病床を確保するのは難しいのが現実。県南の総合病院は「医療機関ごとに少数の病床を用意しても、パンデミック時にどれだけの効果があるのか疑問。むしろ複数の大病院を専用病棟にすべき」と指摘する。


効果未知数

 新型インフルエンザに対して欠かせない医薬品について、県は、通常のインフルエンザ治療薬のタミフルを、〇六―〇七年度に目標量の計十六万二千人分を備蓄した。

 予防効果が期待されるのはワクチンだが、新型インフルエンザウイルスが製造の基になるだけに、出現後でないと製造・供給はできない。

 次善の策とされるのが、鳥インフルエンザ患者から採取したウイルスを基にした「プレパンデミックワクチン」で、国は計三千万人分を確保し医師や看護師ら医療スタッフから優先投与する計画だが、新型への予防効果は未知数とも言われる。


難しい予測

 出現時期や場所、感染被害の大きさ…。新型インフルエンザは予測が難しく、社会・経済機能がストップする事態に発展する恐れもある。岡山大大学院の土居弘幸教授(衛生学・予防医学)は「医療機関によっては、診療行為を行うことが可能かどうかの選択を迫られる場合もある」と危機感を募らせる。

 岡山県保健福祉部は「病床確保を粘り強く働きかけるとともに医療スタッフの確保、新型インフルエンザ患者対応と一般診療との役割分担などに努めたい」とし、関係機関と連携して体制づくりを進める方針だ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年03月09日 更新)

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