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岡山初の肺がん患者会「ライオンハート」発足 闘病の悩み語り合う

肺がん患者の仲間たちと闘病の悩みを語り合う「ライオンハート岡山」代表の田中勇さん(中央)

 岡山県内初の肺がん患者会「ライオンハート岡山」が今年9月に発足した。岡山大学病院近くのブックカフェに事務局を置き、患者同士が闘病の悩みや苦しみを語り合い、治療法や薬剤などについて情報交換している。来月、岡山大学鹿田キャンパスで市民公開講座を開き、つながりの輪を広げようと呼び掛ける。

 「一人だったら病気に負けそうでも、患者さんと一緒に話す機会があれば元気になれる気がする。ここがあってよかった」

 昼下がりのブックカフェ「栞日(しおりび)」(岡山市北区鹿田町)。昨年8月に肺がんで切除手術を受けた女性(64)=岡山市=が店主の田中勇さん(56)に語りかける。田中さんも肺がん経験者。今年8月に開店した店を拠点に「ライオンハート」の代表を務める。

 大手書店の情報システムの仕事で多忙だった田中さんは2010年、背中を激痛に襲われて受診し、進行が速く予後が極めて厳しい「進展型小細胞肺がん」と診断された。東京から自宅のある岡山市に帰郷し、「一緒にがんと闘う」と約束してくれた岡山大学病院の木浦勝行教授を主治医に、抗がん剤と放射線治療に耐えた。

 治療は成功したが、再発や転移の恐怖は頭から消えず、何を見ても感動することができないうつ病状態に。当てもなく旅に出た山口県の寺で空を見上げていた時、ふと「自分は生かされているんだ」と気づき、気持ちが楽になったという。

 退社を決意し、木浦教授に打ち明けると、患者会をつくるよう勧められた。好きな本を読みながら食事を楽しめるブックカフェの開店準備を始めると同時に、全国の肺がん患者会を探して連絡を取り、肺がん関連の学会にも出かけて勉強した。

 「ライオンハート」の仲間は現在約40人。今年4月、岡山市で開かれたがんフォーラムに田中さんが経験者として登壇し、患者会への参加を呼び掛けたのがきっかけとなり、連絡を取り合うようになった。

 5年前に肺がんの切除手術を受けた後、脳内転移が見つかり、放射線治療を経験した女性(45)=岡山市=もフォーラムで田中さんの話に感動したという。「転移した時には、治療しなければあと1カ月の命と言われた。寝られなくて、落ち着いた頃に涙がぼろぼろ流れた。ずっと患者会に入りたいと思っていた」と話す。

 田中さんは肺がんだけでなく、他のがん患者にも「栞日」を集いの場として開放し、「街中がんサロン」のような存在になることを願う。医師や医学生にも白衣を脱いで来店してもらい、ざっくばらんに語り合うことも期待する。

 「病院では、先生の前で『はい』としか言えない患者が多い。患者もすごく勉強しているので、ここで先生に何でも言えるようになれば、医療のレベルを上げる一助になるのではないか」。店では家にいるように落ち着いてほしいと願い、田中さんは帰る客に必ず「行ってらっしゃい」と声をかけている。

 「栞日」の営業時間は午前11時~午後9時。日曜・祝日定休。問い合わせは086―235―2015。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年11月20日 更新)

タグ: がん肺・気管

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