文字 
  • ホーム
  • 岡山のニュース
  • 福山市民病院・救命救急センター開設3年 各科と連携 高い生存率 過労続く医師 負担軽減課題

福山市民病院・救命救急センター開設3年 各科と連携 高い生存率 過労続く医師 負担軽減課題

救命救急センター内の集中治療室。搬入される患者の治療に昼夜を問わず当たる

 広島県東部唯一の3次救急施設・福山市民病院(同市蔵王町)の救命救急センターが2005年4月に開設されてから3年。年間2000件を超える救急患者を受け入れ、命を救う「最後のとりで」として地域医療を支える。しかし、24時間体制で備えるスタッフは過重勤務を余儀なくされ、センターを去る医師も。質の高い救急医療の継続に向け、医師の負担軽減が大きな課題となっている。

 六月のある日の処置室。高所から転落した男性が緊急搬入された。医師ら五、六人がすぐに全身を診断。外傷や骨折の有無、血圧、脈拍…。重症度を判断するのに与えられた時間はごくわずか。治療方針を決めると、ただちに処置に入る。

 宮庄浩司センター長は「緊急患者の治療は時間との戦い。交通事故や労災事故では負傷部位が複数あることも多い。その時、その場の治療がすべて」と話す。


厚い地域の信頼

 同病院事務部によると、救命救急センターへの搬入は〇七年度二千三百五件。〇六年度(二千五百二件)、〇五年度(二千四百三十一件)に比べ、件数としては減少しているものの、命の危険性が高い三次救急患者の割合は高くなっている。

 年間百件前後は、心肺停止状態で搬入。それでも、そのうちの三人に一人の命を救っている。「全国と比べてもうちの生存率は高い」と宮庄センター長。

 背景には、特徴的な治療体制がある。多くの救命救急センターは応急処置だけ行い、その後は各診療科の医師に委ねるが、市民病院は各科の医師と連携しながら退院までセンターの医師が担当。治療方針を一貫させることが高い救命率につながっているという。

 市民病院に救命救急センターができる以前は、重症患者の多くは倉敷市内へ搬送しており、「市民病院が三次救急患者を受け入れるようになってから地域の医療水準は確実に高まった。安心感も大きい」と福山市内のある民間病院の医師。地域からの信頼も厚い。


家に帰れない

 しかし、現場で働く医師の疲労は並大抵ではない。

 救命救急センターには七人の医師が所属しており、毎日二人ずつ当直。各医師の泊まり回数は月八―十一日に上り、自宅に帰れない日も多い。

 この三年でセンターを去った医師も既に三人。「しんどい」「家族と一緒にいられない」…。本人はもとより、辞職は配偶者からの懇願もあるという。これまで、退職者分は新たな医師の採用により補ってきたが、救急医不足は全国的な問題。これ以上の退職者は救急医療の質の低下にもつながりかねない。

 宮庄センター長は「休む間がなく、医師の疲労は限界。待遇の改善がなければ、高いモチベーションを維持し続けるのは正直難しい」と打ち明ける。

 昨年四月からの常勤産科医の不在も大きな課題。かつてはお産時の大量出血への対処など三次救急施設ならではの対応ができていたものの、現在は妊婦の緊急搬入は別の病院が受け入れ。センターの役割を百パーセント果たしているとはいえない状態が続く。

 市民病院の若井久夫事務部長は「地域医療全体のためにも、医師の負担軽減や妊婦の救急搬送の受け入れ再開に向け、人材確保を急ぎたい」としている。

ズーム

 福山市民病院救命救急センター 病床数は集中治療室(ICU)6床を含め24床。2007年度の入院患者数は延べ5544人、平均在院日数は3・4日。専任看護師63人。広域搬送に対応するため、06年春には敷地内にヘリポートを設置。センターの円滑な運営に向け、県や県東部の8医師会などと連絡協議会を設け、支援体制の充実を図っている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年06月17日 更新)

タグ: 医療・話題

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ