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脳死・臓器移植 年取るほど関心 吉備国際大の名越講師らが調査

 高齢者ほど脳死や臓器移植に対する関心は高まる一方、移植の推進については慎重になることが、吉備国際大の名越恵美講師(成人看護学)らが実施した脳死と臓器移植に関する意識調査で分かった。

 調査は、脳死と移植に対する考えが年代層でどう変化するのかを明らかにするため、2006年9月―07年3月、岡山、愛媛両県と大阪府に住む400人にアンケート形式で実施。336人から回答を得た(回答率84・0%)。

 「脳死に関心あり」と答えたのは全体の63・4%。思春期(13、14歳)、青年期(18―23歳)に比べ、成人期(23―60歳)が77・9%、老年期(65歳以上)が81・9%と年齢とともに割合が増加。臓器移植も同様の傾向が見られ、全体では76・5%が「関心あり」とした。

 脳死からの臓器移植を推進すべきかどうかを問う設問では、全体の60・4%が「慎重」と回答。やはり成人期(58・4%)より老年期(76・4%)が増加した。移植を積極的に推進できない理由では、「脳死判定に不安」と答えた人が最も多く、成人期は51・4%、老年期は71・4%だった。

 15歳未満の臓器移植が国内でできない現状については、全体の44・6%が「移植ができるようにすべき」と答えたものの、老年期ではわずか2・8%。15歳未満の家族が脳死判定され、移植の意思を示していた場合でも、老年期では63・9%が「認めない」と否定的な見解を示した。

 名越講師は「高齢者を中心として脳死を人の死として認めない意識が浮き彫りになった。今回の結果を、人の生と死を考え、議論するきっかけにしてほしい」と話している。

 臓器移植法 脳死した人からの臓器摘出と移植を認め、1997年10月施行。臓器提供する場合にのみ脳死を人の死と定めた。脳死判定、臓器提供ともに本人の書面による意思表示と家族の同意を必要とし、国内で臓器提供ができるのは満15歳以上とされている。同法に基づき、脳死判定が76例実施され、うち75例で移植が行われた。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年10月08日 更新)

タグ: 医療・話題

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