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人工ひざ関節を長寿命化 負担軽減へ 部品の耐久性向上 ナカシマメディカル開発

摺動部材の使用例。金属と金属の継ぎ目に挿入する

ビタミンEを添加し、耐久性を高めた人工ひざ関節用の摺動部材

 医療機器メーカーのナカシマメディカル(岡山市東区上道北方)は、ビタミンEの添加によって耐久性を高めた人工ひざ関節用の摺動(しゅうどう)部材を開発し、販売を始めた。世界初の製法といい、一般的に15年程度とされる人工ひざ関節の“寿命”を20年以上に延ばすことが期待される。手術適応年齢の引き下げや再置換回数の低減などにより、患者のQOL(生活の質)向上を図る。

 摺動部材は人工ひざ関節を構成する部品の一つで、骨の代替となる金属と金属の継ぎ目に挿入する超高分子量ポリエチレン製の板状のもの。長年使っていると酸化劣化が進む上、金属が繰り返し表面を滑り動くうちにすり減り、最終的に損壊する問題を抱えている。人工ひざ関節をより長期間利用するには、摺動部材の耐久性を高める必要があった。

 新製法は、超高分子量ポリエチレン粉末に抗酸化剤である液体状のビタミンEを混ぜて金型に詰め、熱と圧力をかけて真空下で摺動部材を成形する。従来製品と比べて摩耗量を3分の2に抑えられるほか、磨耗して出る粉が周辺の骨を溶かすのを抑制する効果も見込めるという。

 ナカシマメディカルは10年前から人工ひざ関節の長寿命化に取り組み、京都大大学院工学研究科の富田直秀教授(医療工学)の研究成果を基に、ビタミンEの持つ酸化防止効果に着目。独立行政法人の科学技術振興機構(東京)が資金面で支援し開発に成功した。

 昨年8月、厚生労働省から医療用具としての製造販売承認を取得。2月10日現在、岡山大病院(岡山市)など全国7医療施設で臨床使用が始まり、導入を検討しているところも多いという。

 同機構などによると、関節の軟骨がすり減る変形性関節症や関節リウマチなど骨・関節にかかわる患者は高齢化の進行とともに増え続け、年間6万人超が人工ひざ関節を組み込む手術を受けている。それに伴い、摺動部材の損壊による置換手術の件数も増加している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年02月17日 更新)

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