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第6回 岡山大病院 心臓血管外科 子どもの手術に精密な技術

子どもを診察する佐野教授(右)

 宮城、富山、千葉、島根、広島…。外来診療の予約名簿には遠方からの患者が目立つ。いずれも生まれながらに重い心臓病を抱えた子どもたちだ。他の病院ですでに手術していたり、診断がついている人も多い。

 「ゴッドハンド」、または「ブラック・ジャック」―。岡山大病院心臓血管外科の佐野俊二教授はこう呼ばれ、腕を頼って全国から患者が集まる。

 ニュージーランド・オークランド大、豪州・メルボルン大で武者修行を重ね、一九九三年、四十一歳で心臓血管外科の教授になった。昨年一年間の心臓手術はカテーテル治療も含め約五百例。全国の大学病院の平均が百例と言われる中、驚異的な多さだ。

 独自に考案した手術も少なくない。その一つが、心臓から血液をスムーズに送り出せない「左心低形成症候群」の術式で、自らの名を冠した「Sano手術」。二つの動脈を人工血管で結ぶ従来の「ノーウッド手術」は肺と心臓に負荷がかかって突然死するケースが多かったのに対し、佐野教授は人工血管を右心室に直接つなげて安定させ、術後管理を容易にした。

 一九九八年から七十一例を手掛け、成功率は92%。「当時は心室を切るのはタブーに近かったが、せっかく手術で成功しても亡くなる例が後を絶たず、何とかしたかった」と佐野教授。

 このほか、右心室の発達が遅い子どもにさまざまな治療を組み合わせて右心室を大きくしたり、不整脈の患者に対し、原因となる心臓の右半分を切るなど、大胆かつ精密な技術を要する手術を次々と手掛けてきた。

 今月下旬には、新しい「入院棟」のオープンで集中治療室(ICU)のベッド数が十から二十二に倍増。手術数も年間七百―八百例(先天性五百例)にまで増やす計画で、佐野教授は「世界のトップレベルと肩を並べる治療体制を築きたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年03月04日 更新)

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