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第6回 岡山大病院 遺伝子・細胞治療センター、泌尿器科 実用化へ臨床試験で成果

遺伝子治療の実用化に向けて研究する遺伝子・細胞治療センターのスタッフ(岡山大病院提供)

公文裕巳教授

藤原俊義准教授

 遺伝子治療は、「体の設計図」の遺伝子を薬のように体内に注入する。岡山大病院は遺伝子・細胞治療センターや泌尿器科が実用化に向けた臨床試験を進めている。

 同センターの藤原俊義准教授らは一九九九年三月、国内初の肺がん遺伝子治療に着手した。

 異常増殖するがん細胞の自滅を促すがん抑制遺伝子p53を、無害化した風邪ウイルス(アデノウイルス)に組み込み患部に注射する手法。二〇〇三年七月まで、東京医大など他の国内三施設と末期患者十五人に実施し、十一人で 腫瘍 ( しゅよう ) 増大を阻止するなど治療効果が認められた。

 この手法による治療薬は、米国で頭 頸 ( けい ) 部がんを対象にした臨床試験が先行。その効果を確認するため、国内での肺がんをターゲットにした研究は一時待機中。「米国で頭頸部がんの医薬品として認可されれば、国内での研究に弾みがつく」と藤原准教授。

 泌尿器科(公文裕巳教授)の研究グループは、前立腺がんで国内初の遺伝子治療を〇一年三月に始め、〇六年六月まで続けた。

 がん細胞の自滅を誘う抗ウイルス剤・ガンシクロビルの働きを高める酵素の遺伝子を、アデノウイルスに組み込み患者に注射し、その後、ガンシクロビルを点滴投与するという手法。九例中六例で、がんの活性を示す腫瘍マーカーが下がった。

 さらに泌尿器科は、新たな「免疫遺伝子治療」の実施準備も進める。免疫力を高める体内物質・インターロイキン12をつくる遺伝子をアデノウイルスに組み込み患部に注射。免疫細胞を活性化させ、がんを攻撃する仕組みで、四月にも始める予定だ。

 遺伝子・細胞治療センター長も務める公文教授は「先に行った遺伝子治療では、安全性と効果を世界に先駆けて実証した。免疫遺伝子治療では、さらに高い効果を期待している」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年03月04日 更新)

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