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冬に多発 心臓病に注意を 榊原病院に聞く(1) 気温の低下で血管収縮 温度差減らす工夫を

山本桂三副院長

 日本人の死因でがんに次ぎ二番目に多い心臓病は、冬に多発する病気だ。二〇〇七年の場合、一月にこの病で亡くなった人は、最も少ない九月に比べ六割近くも多かった。その治療で岡山県内屈指の実績がある心臓病センター榊原病院(岡山市丸の内)を訪ね、多発の理由や予防策、さらに最新の治療について聞いた。

 心臓病の中でも冬、特に多いのが、心臓自体に酸素と栄養を送る冠動脈という血管が老化や高血圧、高コレステロールなどによる動脈硬化で狭くなる狭心症と、さらに症状が進み冠動脈が詰まる心筋 梗塞 ( こうそく ) だ。虚血性心疾患と呼ばれる。

       ◇

 「気温の低下で血管が収縮し詰まりやすくなるのが冬に多発する原因」と説明するのは山本桂三副院長(循環器内科)。「家の中でもリビングなどは暖房が効き暖かくても、風呂場やトイレは寒い。激しい温度変化で冠動脈が収縮し狭心症や心筋梗塞を招く」。風邪やインフルエンザなど感染症が流行し、心臓に負担がかかりやすいのも一因という。

 このため、風呂の脱衣場はあらかじめ暖房で暖める、浴室は浴槽のふたを外しておいたり温水シャワーをしばらく流すなどリビングとの温度差を減らす工夫を勧める。トイレも便座のヒーターで暖かくしたり、ガウンなどで防寒に努める。

 虚血性心疾患は七十代以上の高齢者に多い。高血圧や脂質異常症、糖尿病など生活習慣病の患者も動脈硬化が進んでいる恐れがあり注意が必要。また、同じ血管の病気である脳梗塞患者の四割は将来、心筋梗塞を患うといわれ、山本副院長は検査を勧める。

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 症状を感じたら、どうすればいいのか。

 狭心症、心筋梗塞の主な症状は胸の痛み=下欄参照。医療関係者以外では痛みが心臓病によるのか、他の病気なのか分かりにくいが、「冷や汗が出るような激しい痛みが特徴。神経痛や筋肉痛ではまず起こらない」と山本副院長は解説する。

 特に、症状がだんだんひどくなったり、二十分以上続く際は救急車を呼び、すぐ病院へ向かうべきだという。

 病院では検査や診察の結果、軽症の狭心症なら投薬治療で様子をみる。だが、重症の場合、手首や足の付け根から血管にカテーテルという細い管を入れて冠動脈まで進め、狭まったり詰まった個所を広げ金網状の筒(ステント)を留め置くカテーテル治療や、胸を切開し詰まった血管の 迂回 ( うかい ) 路を作るバイパス手術を行う。

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 特に、近年急増しているのが、手術より患者の体の負担が軽いカテーテル治療。榊原病院では二〇〇七年、九百九十九例行い、最近五年で二・七倍に増えた。治療は三十分―一時間程度。入院期間は緊急に治療する急性心筋梗塞だと二―三週間かかるが、狭心症なら二泊三日で済む。

 従来のステントは、治療した血管がまた狭くなる再 狭窄 ( きょうさく ) が二―三割で起きたが、これを防ぐ薬を塗った薬剤溶出ステントが二〇〇四年に承認され、同病院の場合、再狭窄率が1%弱まで減った。しかし、薬剤溶出ステントは治療後、血栓をできにくくする薬を飲み続ける必要がある。将来、手術や抜歯が難しくなる恐れもあり、再狭窄が起きやすい細い血管だけに薬剤溶出ステントを使っているという。

 ただ、冠動脈の根元などが詰まったケースはバイパス手術が必要。手術時間は一時間前後だが、退院まで二―三週間かかる。同病院では〇七年、百三十例を行っている。

 治療は時間との勝負。「急性心筋梗塞は発症から六時間たつとカテーテル治療を行っても効果が乏しい」と山本副院長。榊原病院では循環器内科と心臓血管外科の医師が一人ずつ当直。カテーテル治療、手術とも二十四時間可能な体制を整えている。

 虚血性心疾患は放っておくと死亡率が30%に上る命にかかわる病気。だが、山本副院長は「病院で適切な治療を受ければ、死亡率は10%以下。さらに榊原病院では2―3%に抑えられ、治療効果は上がっている」と強調している。


虚血性心疾患の主な症状

【狭心症】

(1)特有の胸痛

 胸が締めつけられるような感じ

 重いもので押しつけられるような感じ

 胸が焼きつけられるような感じ

 運動時に起こり、休むと楽になる

 時にあごや奥歯が浮くような症状で、肩から腕の痛みを伴うことがある

(2)息苦しさ

(3)心臓がドキドキする

(4)運動能力の低下

【心筋梗塞】

(1)激しい胸の痛み

 焼け火ばしを当てられたように痛む

 このまま死んでしまうのではないかと思うくらいの不安、焦りを感じる

(2)呼吸困難

(3)吐き気、おう吐

(心臓病センター榊原病院による)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年01月12日 更新)

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