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旧深柢小跡地・川崎病院誘致の陳情採択 “医療の空洞化”懸念 市判断に大きく影響

旧深柢小跡地への川崎病院誘致の陳情を採択した11月定例会本会議=15日

 旧深柢小学校(岡山市北区中山下)の跡地に川崎病院(同所)誘致を求める地元住民らの陳情が、15日閉会の11月定例市議会で採択された。懸案だった中心市街地の貴重な空間利用を判断する市に大きく影響する。市中心部の医療環境が変化する中、今後、市と同病院の動きが注目される。

 「賛成多数であります。これらの陳情は採択と決定しました」

 15日の本会議場。旧深柢小への川崎病院誘致を求める陳情10件が起立採決となり、賛成者数を確認した宮武博議長は宣言した。

 跡地がある地元では、東中山下五丁目町内会などが病院誘致を求める一方、深柢地区連合町内会などは旧深柢小の統合先である岡山中央小(同弓之町)の運動場などが手狭として小学校復活などを要望。それぞれが市議会に陳情した結果、市議会は病院誘致を支持した。

 同病院誘致の陳情に賛成したある市議は「病院を求める地元の声は、無視できないほど広がりを見せ、大きな判断材料となった」と振り返った。

 集会や署名集め 

 旧深柢小の閉校が決まったのは2000年。03年には市議会が跡地に私立小学校誘致を求める同連合町内会の陳情を採択したが実現せず、その後も活用策が定まらなかった。

 一方、有識者でつくる跡地活用の懇談会は、06年2月に提言をまとめた。しかし、「公共性や中心市街地活性化などを勘案しながら活用法を検討すべき」と具体的方針を示せず、活用問題の議論は止まってしまった。

 ところが今年2月、市が岡山総合医療センター(仮称)の岡山操車場跡地(同北長瀬地区)への整備に伴い、市民病院(同天瀬)を廃止する方針を決定。市中心部の“医療の空洞化”を懸念する声が高まった。

 こうした背景もあり、病院誘致を求める地元住民有志が8月以降、相次ぐ陳情に加え、住民集会を開いたり、1万人超の署名を集めるなど賛同者集めを本格化。市議会内での理解が広がってきた。

 陳情は9月定例会では継続審査となったが、今月10日の市議会総務委員会では、病院誘致の陳情について「地元意見のみで採決はできない」「市の方針が示されておらず、議会が先走って議論する必要はない」との意見も出たが、「長年議論しており、議会として一定の方向性を示すべきだ」との意見が上回り、同陳情を採択した。

 次のステップ 

 「議会の決定は重く受け止めている。川崎病院側から話があれば意見を聞きたい。もし来られたら、(跡地に考えられる施設をめぐり)準備しないといけないと思っている」

 病院誘致の陳情が採択された本会議終了後、高谷茂男市長は取材に答えた。市長はこれまでに記者会見で「市全体として何がそこにあるべきか、まちづくりの中で考えるべきだ」と述べ、慎重な構えだったが、議会の判断を受け次のステップを踏み出そうとしている。

 川崎病院は建物が老朽化し、跡地への移転建て替えを希望している。本会議の陳情採択を受け、坂手行義院長は「旧深柢小跡地の利用については市にもご相談させていただきたい」とコメントした。

 中心市街地活性化の起爆剤となることが期待される旧深柢小跡地。来年4月には岡山市議選があり、その前になんらかの方向性が示されるのか。選挙前に開かれる予定の2月定例会に向け、動きが活発化しそうだ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年12月16日 更新)

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