顎関節症 薬やマウスピースで治療
顎関節の解剖図
スプリント療法に使われるアクリル樹脂製のマウスピース
まつか・よしぞう 岡山大安寺高、岡山大歯学部卒。同大大学院歯学研究科修了。米国カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)歯学部研修医、同部助教授などを経て、2005年から現職。岡山市出身。47歳。
顎関節は左右の耳の穴の前にあり、下顎骨の後部から上方に突き出た「下顎頭(かがくとう)」と、側頭骨のくぼみの「下顎窩(か)」で構成される。その間に線維軟骨の「関節円板」があり、クッションの働きをしている。口を大きく開けるときは、下顎頭が関節円板を乗せた状態で前に移動し、閉じるときは逆に後退し元の位置に戻る=図参照。
顎関節症は、歯ぎしりの癖、ストレスで強くかみしめることなどから生じる。顎を動かす筋肉が障害される▽顎の関節組織に微小な外傷が加わる▽関節円板がずれる▽顎関節の骨が変形する―タイプなどに分類される。
松香准教授が岡山市民を対象に行った疫学調査では、顎関節症状は20〜30代に多く、加齢とともに減少。特に治療をしなくても症状が消えることがあるが「痛みや開口障害が強い場合は治療が必要」と話す。
治療は、痛みが強い場合は鎮痛薬、筋弛緩(しかん)薬を使うが、家庭内療法などが中心となる。同療法には、硬い食物を避け、歯をかみしめないといった自己管理のほか、口を動かす筋肉のストレッチ法がある。
顎をしめる咬(こう)筋、側頭筋の緊張を和らげる方法で、口を6秒間、症状に応じて指1〜3本分開けた後、小休止する。この動きを6回繰り返すのを1セットとし「1日6セット行えば効果的。痛みがあれば中止を」という。
顎の関節や筋肉に負担をかけないよう就寝時、マウスピースを装着するスプリント療法もある。「日中は意識してかみしめないようにできるが、就寝時はコントロールが難しいためで、早ければ約1カ月で痛みが取れる」
こうした治療で、大半の患者は症状が軽減する。症状が続く場合、顎関節に痛み止めの注射を打つこともあるが、手術に至る例はほとんどない。
顎関節症を含め、歯や頭頸部(けいぶ)などが痛む病気は、口腔(こうくう)顔面痛と総称される。顎関節症や歯周病は歯科医の治療で症状は収まるが、痛みが継続する場合は要注意。「脳腫瘍、三叉(さんさ)神経痛などが潜んでいるケースがあり、他科と連携し診断、治療する必要がある。気になる人は受診を」と呼び掛ける。
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岡山大学病院(岡山市北区鹿田町)顎関節症・口腔顔面痛み外来の新患受け付けは月〜金曜日の午前8時半〜11時。問い合わせは総合診断室(予診室、086―235―6816)。
(2011年04月04日 更新)