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(6)職員一人一人が「自身がCOVID―19に感染している」という想定で医療に取り組む 岡山西大寺病院理事長 小林直哉

小林直哉氏

 新型コロナウイルス(COVID―19)はヒトの粘膜に付着し、そこから体内に入り込んで増殖することで発熱やせきなどの症状を引き起こします。2019年12月に中国で初めて報告され、今もなお世界的な流行を見せています。

 COVID―19による症状は、人によって異なりますが、多くの感染者では軽度から中等度の症状です。ウイルスに感染してから症状が現れるまでの期間は平均5~6日ですが、長い場合は14日かかる場合があります。

 発熱やのどの痛み、咳(せき)が長引くこと(1週間前後)が多く、強い倦怠(けんたい)感、味覚障害や嗅覚障害を訴える方が多いことが特徴です。重症化すると肺炎となり、死亡例も確認されているので注意が必要です。特にご高齢の方や基礎疾患のある方は重症化が懸念されます。

 岡山県の新規感染者数は、22年2月5日をピークに減少傾向を示しているものの、本日(2月24日)も500人を超え、依然として高い水準で推移しており、岡山県への「まん延防止等重点措置」の適用は、3月6日まで延長されました。

 当院では、昨年5月から連続した四つの個室を使って、COVID―19感染者の入院加療を開始しました=写真1

 目に見えない病原体との闘いです。COVID―19感染症の特徴としては、医療従事者が無症状でも他人に感染させる可能性があることです(いわゆる、無症状病原体保有者です)。従来から行っているマスクの着用、こまめな手洗い、「3つの密(密閉・密集・密接)」を避ける、さらには「職員一人一人が、自分自身がCOVID―19に感染している」という想定で業務に取り組んでいます。

 こうした「新しい医療・看護・介護スタイルの実践」をスローガンとしています。幸いにも院内クラスター「ゼロ宣言」を継続しえております。

 ウイルスは、増殖や流行を繰り返す中で遺伝子配列を少しずつ変異させており、COVID―19は約2週間で1カ所程度の速さで変異を繰り返しているといわれています。

 昨年に当院で加療したCOVID―19感染者ではほぼ全例に中等度から高度な肺炎を生じていました。一方、オミクロン変異株では、ワクチン接種の効果もあり、ウイルスが咽頭にとどまることが多いためか、当院入院加療例は全例軽快退院しています。画像検査では昨年のような多発性肺炎像を伴う感染者が減っている印象です=写真2

 COVID―19感染症の治療としては、病状や重症度に応じて、中和抗体薬、抗ウイルス薬、ステロイド薬、免疫調整薬、酸素の投与等を行っています。

 一方で、ハムスターを使った感染実験では、ステルスオミクロンBA・2株は、伝播(でんぱ)力、病原性、免疫抵抗性のいずれにおいても、BA・1(従来のオミクロン)よりもリスクが高い可能性が報告されており油断は禁物です。

 岡山市東区の地域医療を担う医療機関として、当院では院内PCR検査の拡充から入院加療までと、COVID―19感染症の診断から医療、看護までの治療体系が確立できてきました。

 本紙面をお借りして、これまでご指導、ご助言をいただきました岡山大学病院高度救命救急センターの中尾篤典教授、岡山県保健福祉部新型コロナ対策室の光井聡先生をはじめとした多くの関係者の方々に深く御礼を申し上げます。

     ◇

 岡山西大寺病院(086―943―2211)。連載は今回で終わりです。

 こばやし・なおや
 岡山大学医学部卒業。医学博士。米国ネブラスカ州立医療センターに留学した後、岡山大学医学部附属病院第一外科講師などを経て2010年に岡山西大寺病院院長、12年から理事長。岡山大学医学部医学科臨床教授。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年03月07日 更新)

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