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(31)片頭痛 笠岡第一病院 渡辺 明良主任診療部長(59) 問診でタイプ判別 新薬登場、自己注射も可能に

渡辺主任診療部長。かつてのメッサーは診断医としての円熟味を増す

 「頭が痛いと訴えて病院へ来る患者さんが多い。誰もが経験する症状なんですが、脳出血など命に関わる兆候であったり、ずっきん、どくどく、と夜も眠れない痛みを繰り返すケースもあり、頭痛は多様です」

 頭痛の原因、タイプを見極めるのが日本頭痛学会専門医・指導医のこの人の腕前の見せどころ。頭痛の発生時期、持続時間、頭のどの辺り、片側か、動くと痛いかなどを聞く問診、肩や頭、顔面などの触診、神経学的な診察、CT(コンピューター断層撮影装置)、MRI(磁気共鳴画像装置)などの画像検査で診断を下す。問診で大体見当をつけ、蓄膿(ちくのう)と言われる副鼻腔(びくう)炎、脳出血、脳腫瘍など器質性疾患の可能性は画像診断ではっきりさせ、排除されると頭痛のタイプを明確にする診断を下す。

 片頭痛は一般的に頭の右か左に起こる。しかし両側に起こることもある。脈拍に合わせて痛みがずきん、ずきんと起こる拍動性。動くと響く。

 緊張型頭痛は肩こりとともに頭をしめつける痛みがあり、持続性。場所は両側で、動いても痛みは変わらない。

 群発頭痛は激しい痛みが毎日繰り返し、場所は目の奥や側頭部。痛みでじっとしていられなく動き回る。

 「それぞれ症状に特徴があり、問診でタイプの識別はできる。診断により、タイプ別に痛み、症状に合った治療をする。痛みが起きる前に予防もできる」と自信を持つ。

 3タイプの中で患者が最も多いのは緊張型頭痛だが、日常生活への支障は少ないので、病院へ来る患者が多いのは片頭痛。統計では840万人で糖尿病、高血圧を超え、男性より女性に多く、30代女性の5人に1人が片頭痛。

 どういうメカニズムで片頭痛は起こるのか。寝不足、ストレス、生理などで神経が興奮すると脳の硬膜にある血管に三叉(さんさ)神経の末端から炎症を起こす物質が放出され、血管が腫れ上がる。この情報が脳に伝達され悪心、嘔吐(おうと)などを誘発、さらに炎症が広がり痛みが拡大する。

 炎症を起こす物質の放出を抑制し腫れた血管を収縮させる新薬トリプタンが開発され、注射薬は2000年、内服薬は2001年、保険適用になり、治癒は向上、痛みは速やかに改善し、劇的に治るケースも。かなり激しい片頭痛、群発頭痛には自己注射も可能になった。カートリッジに入っている注射器を大腿(だいたい)部の皮下に打つと15分で楽になる。

 「頭痛を軽くみるといけない。重大な脳疾患のシグナルの場合もある。頭痛は早く専門医が的確に診断すれば、予防もできるし、痛みは軽減できる」。岡山県内の頭痛専門医は16人。頭痛持ちは市販薬で当座しのぎするケースが多いようだが、頭痛ダイアリーを勧める。頭痛の程度を重度、軽度と記入、日常生活への支障を「横になった」「家事の能率が半分以下」など具体的に書き、症状も「脈打つ痛み」「吐き気」と日記風に書き込む。「医師はそれを見て、投薬の種類、タイミングを判断。患者と一体になって治療を進める」と言う。

 新潟大学脳研究所脳神経外科で研究、治療。脳腫瘍、脳出血、脳動脈瘤(りゅう)の開頭手術、血管内治療に当たり日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医。さらに神経放射線科で研修、脳の神経学、画像診断に取り組み、MRIがない時代に血管の変化からこの腫瘍はどこから出ているのかといった読影術を鍛えた。新潟大、川崎医大を経て笠岡第一病院に勤務。脳外科と脳神経の立場から脳全体を診る力を持つのが強み。

 「頭痛という小さなヒントから脳のどこに病気が潜んでいるか、脳内の血管、神経に目を凝らす。画像もしっかり見ます。ここが私の経験が生かされるポイントです。大きな脳疾患が見当たらなければ、患者さんにあった治療方法で痛みを取り除きます」。かつてのメッサー(執刀医)は診断医として円熟味を増している。

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 わたなべ・あきら 総社市生まれ。都立小石川高、新潟大医学部卒。新潟大学病院、長野赤十字病院に勤務。1986年川崎医大講師。2001年笠岡第一病院診療部長。高校時代はラグビーに熱中。大学では茶道部を創部した。

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 外来 渡辺医師の外来は月曜から金曜日の午前中と火曜、水曜日の午後。予約制。電話0865-67-0211。

笠岡第一病院
笠岡市横島1945
JR笠岡駅から車で10分。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年12月19日 更新)

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