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慢性閉塞性肺疾患(COPD)を知っていますか? 肺の生活習慣病、気になったら受診を

内科部長
友田 恒一
1995年奈良県立医科大学大学院医学研究科卒。医学博士。大阪府済生会吹田病院呼吸器内科医長、奈良県立医科大学内科学第二講座講師、准教授。同大付属病院医療安全推進室室長を経て、2018年10月より川崎医科大学総合医療センター内科部長を務める。専門は慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性呼吸不全。

 川崎医科大学総合医療センター(岡山市北区中山下)の内科部長で、同大学総合内科学1教室の友田恒一主任教授が、肺の生活習慣病 慢性閉塞性肺疾患(COPD)について解説する。

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 ―COPDとはどんな病気でしょうか?

 新型コロナウイルス感染症の危険因子として3番目に慢性閉塞性肺疾患(COPD)が挙げられています。また、厚生労働省が展開している21世紀における国民健康づくり運動(第二次)(以降、健康日本21)の重要疾患として、がん・循環器疾患・糖尿病とともにこのCOPDが挙げられています。

 COPDはChronic Obstructive Pulmonary Diseaseの頭文字です。Chronic Pulmonary Diseaseは慢性呼吸器疾患で理解しやすいですが、Obstructive=閉塞性という言葉が難しいと思います。呼吸というのは息を吸って吐いてという動作で、閉塞性とは息を吐きにくいことを表しています。慢性の肺の疾患のうちで息が吐きにくいものを慢性閉塞性肺疾患と呼んでいます。

 肺はよく風船で例えられるのですが、この息が吐けない病態としては、肺胞壁が破壊されることで弾力性がなくなり縮みにくくなる気腫型と空気の通り道の気道が厚くなり内腔が狭くなる非気腫型(気道型)の2種類があります。国内では気腫型が多いとされています。

 ―原因はなんでしょうか?

 主な原因はたばこです。少ししか吸っていなくても重度のCOPD になることもある一方で、長年吸っていても発症しない場合もあります。個々によって発症する、しないがあります。これは喫煙感受性として知られています。この感受性にはさまざまな要因が関与していることが知られています。COPDは喫煙という生活習慣を背景に発症する21世紀の生活習慣病といえます。

 ―肺だけの病気でしょうか?

 COPDは喫煙を背景に発症する疾患であり、さまざまな併存症があることが知られています。併存症としては、体重減少をともなう栄養障害、心血管疾患、骨粗鬆症(しょうしょう)、骨格筋機能障害のほか貧血なども知られています。

 また栄養障害は予後因子として知られており、栄養療法も大切な治療の一つに挙げられています。骨粗鬆症と骨格筋機能障害は日常生活動作(ADL)低下と関連しており、身体活動性の低下につながります。動けなくなることで気分も落ち込み、精神的にもうつになることも知られています。

 COPDは肺だけの病気ではなく全身性の疾患であり、併存症の対策も重要となります。最近注目されているサルコペニアという病態がありますが、年齢・疾患に伴うサルコペニアは身体活動にも非常に影響があるといわれています。

 ―治らないのでしょうか?

 どの病気でもいえることなのですが、早期に発見して早くから治療を受けることが大切で、よくなる可能性がある疾患です。早期であれば禁煙、中等症以上では禁煙に加えて吸入薬を使用することで症状だけでなく呼吸機能も改善することが知られています。

 ―COPDはなぜ注目され、なにが問題なのでしょうか?

 まず死亡者数の増加です。2019年では国内で年間約1万8000人がCOPDで亡くなられています。悪性疾患、心疾患、腎疾患、肺炎とともにCOPDの死亡率は増加の一途をたどっています。

 次に医療費用の問題があります。重症度が上がるほど使用する薬剤が増え、酸素療法も必要になります。また入院機会も増え、一旦入院するとなかなか退院することができず在院日数も増えることになります。

 このような背景もあり健康日本21の課題としてこのCOPDが挙げられています。健康日本21では、平成23(2011)年度における認知度25%を令和4(2022)年度までに80%にすることが目標とされました。しかしながら現在でも認知度は30%程度に留まっています。

 さらに未診断例がほとんどで、95%の人が未診断といわれています。

 ―未診断例を減らす対策はありますか?

 通院して治療を受けていただくことが大切です。これには、認知・受診・診断・通院(治療)の4つの過程があります。

 このような機会を通じてまずCOPDを知っていただくこと、思い当たることがあれば勇気をもって受診していただくことが大切だと思っています。呼吸器内科医と患者さん両方の活動や行動が必要だと思っています。周囲にもしや? と思う方がおられたら受診を勧めてほしいです。COPD質問票(http://www.gold-jac.jp/support_contents/copd-ps.html)もありますので自己診断をしていただき、4点以上があれば受診をお勧めします。

 ―どのようにして診断されますか?

 確定診断のためには呼吸機能検査が必要です。喫煙歴があり閉塞性換気障害(吐けない肺)であれば、COPDの可能性が高いということになります。

 この検査は努力が必要です。思い切り吸いきった空気を一気にそして、最後まで吐ききる必要があります。

 ―どのような治療がありますか?

 早期であればまず禁煙です。早期に禁煙すると症状の改善だけでなく呼吸機能も元のレベルまで回復することがあります。禁煙には周囲の方の協力や支援も必要です。禁煙を容易にできる人だけでなく、禁煙できなかった人、禁煙したいと思っているが禁煙できない人、禁煙する気がない人すべての喫煙者を支援する気持ちが大切だと思います。

 閉塞性障害は軽症、中等症、重症、最重症の4段階に分類されていますが、症状がまだ顕在化しない中等症が最も閉塞性障害の進行が早くこの時期に禁煙することが大切です。

 禁煙以外には吸入薬があります。長時間作用が持続し継続して使用すると主な症状である息切れが改善し、呼吸機能も改善することがあります。

 リハビリテーションの有用性も知られています。吐く時に重要な役割を果たす腹筋と身体活動性維持に大切な下肢筋力に対するリハビリテーションが有効です。

 さらに進行した場合には酸素療法や人工呼吸器を使用することになります。また栄養状態が悪化することも栄養療法も大切な治療となります。このように病状が進行すると多くの職種が関与する集学的治療が必要となってきます。

 ―気になる症状のある方へ

 診断時には、すでに重症化しているケースもあるため、気になる症状がある方は勇気を持って受診していただければと思います。




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(2022年08月16日 更新)

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