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(1)冠動脈の新しい検査、FFRctについて 津山中央病院副院長 岡岳文(循環器内科)

岡岳文氏

 当院は『岡山県北医療の最後のとりで』として、新型コロナ治療も救急・高度医療どちらも積極的に対応しています。

 代表的な救急疾患である急性心筋梗塞は、心臓を栄養する冠動脈が閉塞する緊急治療が必要な状態です。岡山県北だけでなく兵庫県や鳥取県の一部からも搬送されており、年間120人程度の心筋梗塞を治療しています。

 冠動脈が閉塞する前、すなわち狭窄(きょうさく)している状態は狭心症といって、多くは労作時の胸の痛みを訴えて外来を受診されます。早期の診断と適切な治療をすることが大切です。

 冠動脈の最終的な診断には心臓カテーテル検査が必要ですが、その前に冠動脈CT検査を行う例が増えています。もともと血管径が3ミリ前後の冠動脈がさらに狭くなっていないかどうか視覚的に評価できます。外来で検査ができるため検査数が増えていますが、中くらいの狭窄の場合や狭窄が複数存在する場合には、カテーテル治療を行うかどうか、また、どこに治療を行うかなど、判断に迷うことがあります。

 今回、2022年3月に改訂された安定冠動脈疾患の診断と治療のガイドラインにおいて「FFRct(エフエフアールシーティー)検査」の推奨度が上がったのにあわせ、当院でも本年5月からFFRctが実施可能になりました。県内では3施設目になります。

 特徴は、冠動脈の狭窄前後での血流低下の度合いを、数値で表すことができ、視覚的にもわかりやすいことです。診断精度が向上し、結果的に心臓カテーテルを実施しなくて済んだり、カテーテル治療前の準備をしっかり行うことができたりするのが利点だと思います。

 FFRctは今までと同様に冠動脈CT検査を行い、CT画像を確認した上で、得られた画像データを個人情報保護に注意して解析施設に送ります。検査を受け直す必要がないため患者さんに新たな造影剤や被ばくの心配はありません。注意点としてはすべての患者さんに利用できる訳ではないことです。

 ステント治療後、開心術後などの患者さんには利用できないため心筋シンチグラムや心臓カテーテル検査などで評価します。CTの元画像の描出が悪い場合は解析できない場合があります。検査解析料は1割負担の方で約7500円程度余分にかかることをご了承ください。

 FFRct検査は体への負担が比較的少ない診断精度に優れた検査です。今後は検査数が増えることが予想され、結果、患者さん本位の検査、治療に寄与できるものと考えています。

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 津山中央病院(0868―21―8111)

 おか・たけふみ 岡山一宮高校、鳥取大学医学部卒。福山市民病院、岡山大学病院、岡山済生会総合病院を経て2010年より津山中央病院。22年より現職。日本循環器学会専門医、岡山県急性心筋梗塞等医療連携体制検討会議委員。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年09月19日 更新)

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