文字 

病床使用率58% 逼迫度増す 県内「第8波」一般医療に影響も

川崎医科大付属病院の重症用病床でコロナ患者をケアする看護師=14日(同病院提供、画像の一部を加工しています)

 新型コロナウイルスの流行「第8波」の影響で、岡山県が確保するコロナ患者向け病床(600床)の逼迫(ひっぱく)の度合いが増している。15日時点の病床使用率(速報値)は全体が58・0%で、このうち重症用が11・9%。全体の病床使用率は12日時点から3日間で6・7ポイントも上昇しており、コロナに感染して出勤できなくなる医療従事者も日を追うごとに増加。一般医療に影響が出始めた医療機関もある。

 「重症用ベッドは、あと6床追加できるが、感染拡大のピークはまだまだ先。新たなコロナ患者の受け入れができなくなる日も遠くない」

 川崎医科大付属病院(倉敷市)の永井敦院長は危機感をあらわにする。

 同病院のコロナ患者向け病床は重症用4床、中等症用20床の計24床。12日時点で5人だったコロナの入院患者は16日時点で重症用ベッドに1人、中等症用に19人と一気に増えた。

 スタッフの出勤停止による人手不足も深刻になりつつある。同病院ではコロナに感染したり、濃厚接触者になったりして、現在は約70人が勤務できない状態。他の疾患の患者の入院を制限せざるを得ないケースも生じ始めた。

 永井院長は「今夏の『第7波』では最大で90人ほどの欠勤者が出た。もし100人以上となれば、外科手術の延期や救急患者の受け入れ制限も検討しなければならなくなる」と危惧する。

 県内の1日当たりの新規感染者数は9月27日~11月5日は千人を下回り、全体の病床使用率も30%以下で推移していた。だが、感染者が増え始めた11月中旬に30%を超え、12月5日には51・0%に。県は同6日、中等症用の全533床をコロナ病床として稼働させるよう医療機関に要請した。

 国立病院機構岡山医療センター(岡山市)のコロナ病床は計26床。重症用5床、中等症用21床のうち、16日時点で18床が埋まる。

 同センターが入院を受け入れたコロナ患者は10月は17人、11月は33人。12月は16日時点で既に30人に達した。「『第7波』ではコロナ病床が満床になり、他の診療に影響が大きく及んだ。人の動きが活発になる年末年始に感染がさらに拡大すれば、同じ状況に陥ってしまうだろう」と感染症内科の斎藤崇医長。

 22床(重症用4床、中等症用18床)を稼働させる津山中央病院(津山市)の患者は15日時点で14人。現在、看護師約500人のうち約30人が出勤停止になっており、既に「第7波」のピークを上回っているという。西川秀香統括看護部長は「出勤停止になるスタッフはまだまだ増えそう。一人一人の負担は大きいが、力を合わせて難局を乗り切りたい」と話す。

 倉敷中央病院(倉敷市)は計20床(重症用4床、中等症用16床)。15日時点で28人が入院しており、別の疾患の患者用個室を一時的に転用して対応している。

 県新型コロナウイルス感染症対策室は県内の医療機関にさらなる増床を呼びかけているが、発熱外来などの対応もあり、大幅な増床は見込めないという。同対策室は「一部の医療機関に入院患者が集中しないよう、転院の調整を進めるなどして医療提供体制の破綻を防ぎたい」としている。

 岡山県の新型コロナウイルス患者向け病床 県が確保する病床は計600床。重症用が67床、中等症用が533床で、軽症用はない。感染の収束期間は別の疾患の患者向けとして運用できるが、感染拡大期になると、県がコロナ病床として稼働させるよう要請する。コロナ患者の入院先は原則として県が調整している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年12月16日 更新)

ページトップへ

ページトップへ