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精神科患者の意思表明に支援者を 岡山の弁護士ら「センター」設立

事業計画などが話し合われた「おかやま精神医療アドボケイトセンター」の設立総会=11月、岡山市

 精神科の入院患者が退院や処遇改善の意向を病院側に伝えられるよう支援する、岡山県内では初の本格的な組織を弁護士や入院経験のある当事者らが立ち上げた。2023年度からボランティアのスタッフを病院に派遣する事業を展開する計画。病気への偏見などから社会的な受け皿が少ない精神科患者は入院が長期化しやすく、事業を通じて患者の意思が尊重される仕組みづくりを目指す。

 組織は一般社団法人「おかやま精神医療アドボケイトセンター」。アドボケイトは英語で意思表明の支援者を意味し、患者の要請で病院を訪問し、本人の思いや希望を丁寧に聞き取って病院スタッフや家族らに伝えられるようサポートする。同様の取り組みは大阪府や東京都、神奈川県などで既に行われ、カナダなど制度化されている国もある。

 同センターは、養成講座の受講者をアドボケイトとして登録。専門資格の有無は問わない。「退院をしたい」「買い物など外出をもっとさせてほしい」といった思いを聞き、それらを請求する権利が患者にあることを伝える。希望に応じて、請求を代理できる弁護士も紹介。退院を望めば支援機関などにつなぐ。

 精神科患者の権利擁護の活動を長年行っている井上雅雄弁護士(岡山弁護士会)を中心に当事者、医療従事者らが準備を進め、今年11月に岡山市内で設立総会を開いた。岡山パブリック法律事務所(同市北区春日町)に事務局を置く。

 厚生労働省によると、患者1人当たりの平均在院日数(21年時点)が、精神病床は275・1日と全病床の平均(27・5日)を大きく上回り、欧米に比べても長いとされる。患者は外部との接触が乏しくなり「『退院して地域で暮らしたい』という意思の表明自体が困難になる」と井上弁護士は指摘する。

 NPO法人大阪精神医療人権センター(大阪市)は1990年ごろからアドボケイトの派遣に取り組み、現在は約50人のボランティアが登録。新型コロナウイルス禍による対面制限が本格化する前の19年度には17カ所の病院に計179回派遣し、患者の退院や院外での買い物につながった。

 アドボケイトの派遣を巡っては厚労省も制度化を目指している。井上弁護士は「活動は寄付などで賄うつもりだが、一人でも多くの患者を支えられるよう、公的な支援も求めながら事業を広げたい」と話す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年12月24日 更新)

タグ: 精神疾患

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