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(49) 地域包括ケア支える糖尿病治療 倉敷スイートホスピタル 松木 道裕 院長(60) 患者本位で 併設住宅の高齢者に24時間対応

診察室では柔らかい物腰で対応する。「押し付けではなく、話をよく聞き、患者さんのライフスタイルを尊重した治療を心掛けている」という

 足を踏み入れると、天窓から柔らかい陽光が降り注ぐ。鉄骨5階の屋内にはカフェ、コンビニ、フレンチレストランに、ビューティーサロンまである。建物の名は「倉敷スイートタウン」。実は、病院とサービス付き高齢者向け住宅を併設した、新しいコンセプトを持つ複合施設だ。

 医療法人和香会(江澤和彦理事長)が8月、リウマチ治療で知られる倉敷広済病院(倉敷市東塚)を移転し、開設した。ここで“まち”の安心を支える病院が「倉敷スイートホスピタル」である。

 「施設は地域包括ケアの実現を見据え、医療から介護までトータルサポートが可能。退院後、身体機能の低下や高齢から日常生活に不安のある方も安心して暮らせる」と松木は語る。

 病院は3階以下に位置し、内科、整形外科、リウマチ科、リハビリテーション科、歯科などがある。1階に外来の診察室、手術室など、2、3階に全室個室の180床(一般病棟、医療療養病棟各45床、障害者施設等一般病棟90床)を備える在宅療養支援病院だ。

 4、5階がサービス付き高齢者向け住宅「倉敷スイートレジデンス」。食事、入浴などの介護サービスが受けられるほか、医療面が何より心強い。「病院の医師や看護師に24時間つながる緊急コールが全戸に設置され、急病時でも直ちに駆け付ける」。訪問診療も可能で、経管栄養、気管切開など医療依存度の高い人も安心な環境にある。

 松木の専門は糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病と、甲状腺を中心にした内分泌疾患。特に糖尿病は、可能性がある予備群を含めると2千万人以上という国民病。「食事の欧米化で脂肪の摂取量が増え、高齢化なども重なって急増した。高齢者では3人に1人が該当するとみられ、早期からの治療介入が重要」と力説する。

 糖尿病は、膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンの不足や作用の低下によって、血液中のブドウ糖を細胞にエネルギー源として十分送り込めなくなり、血糖値が高くなる。怖いのは、放置すれば深刻な合併症を招くためだ。

 糖尿病性腎症、網膜症、神経障害が3大合併症で、悪化すれば人工透析が必要になったり、失明や足の壊疽(えそ)を引き起こしたりする。命を左右する心筋梗塞、脳梗塞も発症しやすい。

 治療の基本は食事・運動療法。「糖尿病は完治しないが、血糖、血圧、脂質、体重をコントロールすれば、合併症を予防し、健康寿命を延ばせる」。それゆえ、脂肪分を抑えバランスの取れた食事、速歩などを促す。さらに、インスリンの分泌を促進させるが低血糖は起こしにくい「インクレチン関連薬」が2009年から相次いで登場し、成果を挙げている。

 この道30年のベテラン。川崎医大で教授を務めた堀野正治、西田聖幸、現教授で糖尿病の薬物療法の権威、加来浩平の薫陶を受け、日夜研さんを積んだ。

 「基本に忠実に」と心し、患者本位の治療にまい進してきた松木。地域包括ケアの一翼を担う新病院でも、その姿勢が変わることはない。(敬称略)

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 まつき・みちひろ 大分上野丘高、川崎医大卒、同大学院修了。川崎医大内科学講師、准教授、川崎医療福祉大教授を経て2012年8月から現職。川崎医療福祉大特任教授。日本糖尿病学会専門医・指導医。大学時代は準硬式野球部で白球を追った。趣味はゴルフと約20年間、週1、2回は続けている水泳。


 サービス付き高齢者向け住宅 バリアフリー構造で原則1戸25平方メートル以上あり、入居者の安否確認や生活相談サービスを備えた住宅。2011年10月施行の改正高齢者住まい法で、従来の「高齢者円滑入居賃貸住宅」「高齢者専用賃貸住宅」「高齢者向け優良賃貸住宅」の3類型を一本化する形で新設された。

 倉敷スイートレジデンス 130戸あり、うち50戸は「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている。住戸面積は18.21〜27.09平方メートル。各戸に車いす対応トイレ、ミニキッチン、洗面台、収納設備などを標準装備し、シャワーかユニットバスを備える。共用設備としてヒノキ風呂、カラオケ・シアタールームなどがある。利用料は家賃、食費などを含め月平均19万円台。

 外来 松木院長の外来は月、火、水曜日(祝日休診)の午前8時〜正午受け付け。


倉敷スイートホスピタル
倉敷市中庄3542の1
電話 086―463―7111
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年11月05日 更新)

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