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骨盤臓器脱の症状や治療法は 岡山中央病院泌尿器科 大岩裕子医師

大岩裕子医師

 岡山中央病院(岡山市北区伊島北町)は、会陰部や膣(ちつ)部の違和感、尿漏れなどを伴う女性の病気「骨盤臓器脱」に関する無料電話相談を12~16日に開設する。相談を受ける泌尿器科の大岩裕子医師に、骨盤臓器脱の症状や原因、治療法について話してもらった。

 骨盤臓器脱は膀胱(ぼうこう)や子宮、直腸など骨盤内の臓器が垂れ下がり、膣壁と一緒に膣から体外に出てしまう病気です。お風呂で体を洗っている際、膣から柔らかいものが出ていることに気付いて来院される方が多いようです。

 骨盤臓器脱の三大要因は加齢、肥満、便秘です。本来、膀胱や子宮などは靱帯(じんたい)や骨盤底筋で支えられていますが、加齢や出産などで徐々に緩みが生じます。腹圧も影響するため腹部の脂肪が多かったり、排便のたびに強くいきんでいたりするとリスクは上がります。

 治療法は、まずは食事の見直しによる生活改善と、骨盤底筋体操です。お食事ノートを作ってもらい、毎回の食事内容を書き出してもらいます。「食べすぎかな」「今日は少し減らそう」などと意識することで、緩やかな体重減に成功される方も少なくありません。便秘解消のため、適度な散歩や食物繊維を多めにとることも心掛けてもらいます。骨盤底筋体操は肛門や膣をキューッと絞って体の中に引き上げるようなイメージで行います。

 これらを数カ月やっても改善しない場合、病状が進みすぎている場合は手術かペッサリー療法を提案しています。ペッサリー療法は、ペッサリーと呼ばれる器具を膣内に挿入して臓器の位置を補正します。根本的治療ではありませんが、すぐに症状が改善できます。

 当院で実施している手術は3種類で、メッシュを使って臓器を引き上げる「腹腔鏡下(ふくくうきょうか)仙骨膣固定術」と「膣式メッシュ手術(アップホールドTVM)」、メッシュを使わない「膣式子宮全摘術」です。それぞれにメリット、デメリットはあり、患者さんの症状や生活に応じて最適な術式をお勧めしています。

 腹腔鏡下仙骨膣固定術はメッシュを縫い付けるので、しっかり臓器を支えることができますが、子宮の一部と卵管を切除したり、メッシュを丁寧に縫い付ける精度の高い作業が必要になりますので、手術には4時間程度かかります。

 膣からアプローチするアップホールドTVMは1時間ほどで終わり、体への負担は比較的軽い手術です。ただ、メッシュは縫い付けない手術方法なので、しっかりくっつくまで3カ月は安静が必要です。

 膣式子宮全摘術は膣から子宮を全摘除した上で、膣壁を縫い縮めて下垂・脱出しないようにしますので、高い技術が要求されます。手術時間は約2時間です。

 当院は今年、国産初の手術支援ロボット「hinotori(ヒノトリ)」を岡山県内では初めて導入しました。夏ごろにはヒノトリを使い、これまで以上に高精度な腹腔鏡下仙骨膣固定術を始めたいと思っています。

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生活改善と骨盤底筋体操を 12~16日無料電話相談

 岡山中央病院の無料電話相談は12~16日の午後2時から4時まで受け付ける。代表電話(086―252―3221)で、「電話相談へ」と告げれば担当者につながる。病気の体験者らでつくる「ひまわり会」(大阪市)が各地の医療機関と行う全国キャンペーンの一環。

 おおいわ・ゆうこ 山口大学医学部卒業。岡山大学医学部付属病院泌尿器科入局。岡山医療センター後期レジデント、岡山大学病院泌尿器科医員を経て2021年から岡山中央病院。日本泌尿器科学会専門医、がん治療認定医、泌尿器腹腔鏡技術認定医。医学博士。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年06月05日 更新)

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