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脱毛防止に頭皮冷却装置導入 乳がん治療の副作用でおおもと病院

おおもと病院が導入した頭皮冷却装置(右)。頭にかぶっているキャップで頭皮を15度程度に冷やして脱毛を抑える

 抗がん剤治療に伴う副作用はさまざまある。中でも頭髪の脱毛は患者にとって大きなストレスで、とりわけ女性にとって悩みは深い。乳がんの専門病院として知られる「おおもと病院」(岡山市北区大元)は、抗がん剤の投与時に頭皮を冷やして脱毛を抑える医療装置を今春から導入した。同時に川崎医科大学付属病院形成外科・美容外科と連携し、乳がんの手術によって失われた乳房を取り戻す乳房再建手術も始めた。患者のアピアランス(外見)の変化による精神的な苦痛を和らげ、QOL(生活の質)を維持・向上させようという取り組みだ。

 抗がん剤治療を始めると、薬の種類によって程度の差はあるが、多くの場合、脱毛が付きまとう。頭髪の成長に重要な役割を果たしているのが髪の毛の根元にある毛母細胞で、抗がん剤によってダメージを受けると、投与後2週間程度で脱毛が始まるとされる。

 ただ、頭皮を冷やして毛細血管を収縮させると血流量が減り、届く抗がん剤が減少する。毛母細胞の活性も低下して抗がん剤の影響を受けにくくなり、脱毛が抑制できるという。

 おおもと病院は、4月に頭皮冷却装置を導入した。国内メーカーが開発した装置で、2020年に国の承認を得ている。岡山県内の医療機関では初めてという。頭に装着するキャップ内にマイナス10度の冷却液を循環させ、頭皮を15度程度に冷やす。抗がん剤を投与するたびに、投与の前後も含めて冷却する。

 磯崎博司理事長は「多くの患者でウイッグ(かつら)が必要ない程度まで脱毛が抑えられたとのデータもある。患者さんのQOLが向上し、治療に向けた意欲が高まれば」と話している。医療保険は適用されないため、1回の費用は1万円程度かかるという。

 一方、乳房再建は川崎医科大学形成外科学の山下修二教授の協力を得て実施する。おおもと病院は、4月に「日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会」の乳房再建実施施設の認定を得た。5月1日には1例目の手術を行った。

 山下教授は、顕微鏡を使って血管や神経などを吻合(ふんごう)する技術「マイクロサージャリー」を駆使した乳房などの再建手術のエキスパート。岡山大学医学部を卒業し、米国MDアンダーソンがんセンター形成外科に留学。東京大学形成外科特任講師から2022年5月、川崎医科大学形成外科学教授に就任した。

 山下教授は「乳房再建は、乳がんで失われたボディーイメージを回復する手術。今後も1人でも多くの患者さんが、整容性と安全性を追求した乳房再建法を享受できる環境を整えていくことが重要であると考えている」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年07月03日 更新)

タグ: がん女性おおもと病院

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