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(4)COPD 倉敷中央病院呼吸器内科副医長 甲田拓之

甲田拓之氏

 COPD(慢性閉塞(へいそく)性肺疾患)とはこれまで慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称のことで、「たばこ病」とも呼ばれる肺の生活習慣病です。長年にわたって有害物質を吸入することで発症します。代表的な有害物質はたばこの煙であり、COPDの患者さんのほとんどが喫煙者です。また、たばこの煙以外の有害物質としては、大気汚染や粉じんなどがあります。

 ■症状は?

 初期のうちは無症状であることが多いのですが、有害物質の長期吸入によって気管支の炎症や肺の破壊が進んでくると、せきやたんが止まらなくなり、軽い運動でも息切れを感じるようになります。

 ■診断の方法は?

 最も大事な検査はスパイロメトリーであり、息を大きく吸ったり吐いたりすることにより肺の機能を評価する検査です。また、胸部の画像検査(レントゲン、CT)により、肺の破壊の程度や肺がんの有無を評価することも大事です(COPDの患者さんは肺がんの合併率が高いことが知られているため)。気管支喘息(ぜんそく)や心不全でもCOPDと似た症状を示すことがあるので、必要に応じて血液検査や心電図などさまざまな検査を行う場合があります。

 ■治療は?

 ほとんどの原因がたばこの煙なので、何よりも重要な治療は禁煙です。禁煙しても破壊された肺を修復することは残念ながらできませんが、喫煙を続けてしまうと病状がさらに悪化し取り返しがつかなくなる恐れがあります。薬物療法は気管支拡張薬と呼ばれる吸入薬が主体であり、狭くなった気管支を広げ呼吸を楽にする効果があります。病気がかなり進行している場合には、酸素の吸入(在宅酸素療法)が必要となることがあります。ちなみに在宅酸素療法を行っている患者さんのうち、約半数をCOPDが占めます=グラフ。

 ■最後に一言

 COPDは日本に500万人以上の患者さんが存在すると推定され、世界の死因の第3位となっている身近で怖い病気なのですが、社会的な認知度があまり高くなく、症状がゆっくりと進行するため見逃されがちな病気です。早期発見が特に重要なので、長期間の喫煙歴がありせきやたん、息切れの症状が長引いている場合には、老化によるものと自己判断せずに、かかりつけ医や呼吸器内科を早めに受診しましょう。

     ◇

 倉敷中央病院(086―422―0210)

 こうだ・たくゆき 愛媛大学医学部卒。松山市民病院、松山赤十字病院を経て2020年4月から倉敷中央病院に勤務。専門は呼吸器疾患全般。日本内科学会認定内科医、日本呼吸器学会専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年07月17日 更新)

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