文字 

議論の末、川崎病院今秋着工 岡山・旧深柢小跡地

川崎病院が移転新築する旧深柢小跡地

新しい川崎病院の完成イメージ図

 「期待の大きさを感じている。地域の安全・安心の確保や中心市街地の活性化に貢献したい」

 岡山市北区中山下の川崎病院。運営する学校法人川崎学園の内藤雅之・新病院開設準備室長は、市有地の旧深柢小跡地(同所、約1万2千平方メートル)で新病院を整備することに気を引き締める。

 旧深柢小は市中心部の小学校再編で岡山中央小に集約され、2005年4月から跡地となった。都心のバスターミナルや表町商店街に近く、利用価値は高いが、活用策が決まるまでに6年余りを要した。

 どう活用するかの意見が地元で割れた。閉校を控えた03年。深柢地区連合町内会は6月に私立小誘致を陳情、市議会が7月に採択した。が、9月には表町商店街連盟などが老朽化した近くの川崎病院の移転誘致を陳情した。

 私立小誘致は実現しなかったが、激しい地元意見の対立のはざまで市は方針を打ち出せず、行き詰まった。

 旧深柢小を取り巻く環境は変わった。10年2月、市が市民病院(北区天瀬)を岡山操車場跡地(同北長瀬地区)に移す計画を公表。北区丸の内にあった心臓病センター榊原病院(現在は同中井町)の移転も明らかになり、医療の空洞化を懸念する声が強まった。

 旧深柢小の地元町内会の一つ、東中山下五丁目町内会などが10年8月、川崎病院の移転建て替えを市や市議会に陳情し、議論は再び激化。「都心の高齢化が進み、いつでも近くに駆け込める受け皿が必要との思いだった」と同町内会の笠井英夫会長(69)。

 深柢地区連合町内会は東中山下五丁目町内会を連合町内会から除籍。深柢小の復活を陳情したが、市教委は必要性を否定した。

 市議会は10年12月、「長年議論しており一定の方向性を示すべき」として病院誘致の陳情を採択。市は昨年2月、45年間の定期借地契約(賃料年額約4300万円)を川崎学園と結んだ。

 新病院は今秋にも着工の予定。川崎学園の構想では、地上15階地下2階延べ約7万8千平方メートル。医療機器を含めた建築費は約250億円。住民がコミュニティー活動に利用できる多目的ホールも設け、グラウンドは災害時の一時避難場所にする。

 新病院は患者や見舞い、病院職員らを含めると1日4千人程度が出入りする見込みという。さまざまな思いが交錯した跡地。中心市街地活性化の起爆剤とする知恵が求められる。開院は15年度末の見通しだ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年01月12日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ