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(5)気管支ぜんそく 倉敷中央病院呼吸器内科医長 濱川正光

濱川正光氏

 ■概要

 ぜんそくはさまざまな原因で気管支が狭くなることで息が吐きにくくなり、喘鳴(ぜんめい)を伴った息苦しさを自覚する疾患です。同疾患はアレルギーに関連した疾患と考えられがちですが、アレルギー以外のさまざまな要因でも発症することが知られています。近年では治療法の発達に伴い死亡者数は大幅に減っているものの、減少速度は鈍化しており、治療のさらなる啓蒙(けいもう)が必要とされています。

 ■診断と治療

 ぜんそくの診断は確立されたものはありません。多くの場合において、症状の経過を目安として診断することになります。喘鳴を伴った息苦しさの訴えがあった場合においてはぜんそくの診断は容易ですが、なんとなく胸苦しい、身体がだるいなどの不定愁訴に近い症状のみを呈する場合は、非専門医では診断が難しい場合があります。また心不全をはじめとした他の疾患でも、喘鳴を伴う息苦しさを呈することがあるので、安易な診断には注意が必要です。

 治療は吸入ステロイドを中心とした薬物治療となりますが、近年では優れた製品が使用可能となっており、良好な症状のコントロールが得られています。また吸入ステロイドを使用しても治療抵抗性であった場合は、従来ではステロイドの内服薬を用いた治療を行っていました。しかしステロイドの内服薬はさまざまな副作用が問題となるため、投薬に伴うメリットとデメリットのバランスが大切となります。

 近年では副作用が少なく劇的な治療効果が期待できる生物学的製剤が使用可能ですので、難治性であればステロイドの内服薬に伴う副作用を避ける意味でも積極的な投与が推奨されます。

 ■当科の取り組み

 当科では最新のエビデンスに基づいた最良の医療を提供すべく努力しております。特に一般的な医療機関ではコントロールが難しい難治性ぜんそくに対して積極的に治療を行っております。しかしながら、過去に難治性ぜんそくと診断されても実際に真の難治性ぜんそくであることは極めて少なく、多くの場合で治療内容の見直しを行うだけで症状が改善することが多いです。

 またぜんそくは併存疾患や環境要因に関連しても悪化することが多いので、呼吸器疾患以外の併存疾患や環境要因に対する管理の見直しも行っております。さらに担当医によって治療内容に差が出ないように、治療内容の標準化にも取り組んでいます。ぜんそくのコントロールにお困りの方は、かかりつけの医師と相談の上で当科にご相談ください。

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 倉敷中央病院(086―422―0210)

 はまかわ・まさみつ 札幌医科大学医学部卒業。神戸市立医療センター西市民病院、西神戸医療センター、堺市立総合医療センターなどを経て、2020年4月から倉敷中央病院に勤務。日本アレルギー学会専門医、日本呼吸器学会専門医、日本内科学会総合内科専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年09月04日 更新)

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