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知的障害者の認知症 対応を模索 岡山・旭川荘、ケアへ全国ネット

ひらた旭川荘の敷地内を散歩する知的障害者ら。高齢化に伴い、認知症の特性を踏まえたケアも求められている

 知的障害者施設で入所者の高齢化に伴い、認知症への対応が課題となっている。認知機能の低下といった症状が元々の障害によるものとの判別が難しいためだ。岡山市の社会福祉法人・旭川荘は岡山大病院と共同で他施設も含め実態調査するとともに、全国の施設とケアの在り方を考えるネットワークをつくるなど対応を模索している。

 11月末、岡山市北区平田のひらた旭川荘。紅葉した並木の中を施設の入所者が職員に付き添われ、散歩していた。車いすの人や、腰をかがめて歩く姿も目立つ。

 「認知症になり、長年の習慣でできていたことでも難しくなる人がいる。食事や散歩といった日課では時間にゆとりを持たせるようにしている」。ひらた旭川荘内にあるわかば寮の井上友和副寮長は話す。

 旭川荘では、知的障害者250人が5施設に入所し、うち約2割が65歳以上。食事に時間がかかる▽食事の片付け方法が分からない▽靴をげた箱に入れられない―といった認知症が疑われる状態の人が増えているという。

 「生活に必要な機能を維持するためにも声かけしながら『待つ』ことが大切」と井上副寮長は説明する。

有病率高く


 同荘では桑野良三医師らが岡山大病院精神科神経科の竹之下慎太郎助教らと2019、20年、全国の社会福祉法人が運営する45施設で知的障害の入所者1831人を対象に調査を行った。

 認知症の有病率は65~69歳9・0%、70~74歳19・6%、75~79歳19・4%。一般の人約1万1400人を対象に別の機関が16~18年に行った調査と比べ各年代で高かった。

 発病率が高い背景は個々の障害の状況にもよるため一概に言えないが、「予防やケアがより重要」と竹之下助教は話す。

ノウハウ蓄積


 桑野医師によると、幼い頃からのかかりつけ医に大人になっても診察を受ける知的障害者は少なくない。「認知症の発見が遅れないよう、早く診断を受け適切なケアを受けられる配慮が必要」と桑野医師は指摘する。

 旭川荘では、19年ごろから、もの忘れ外来などの専門医につないだり、職員が認知症ケアに関する研修を受けたりする取り組みを開始。高血圧やうつ病など認知症の発症リスクを高める疾患にも気を配っている。

 全国の7施設とケアの在り方を検討する研究ネットワークも設立。発起人の一人の井上副寮長は「高齢化による認知症への対応は全国の施設で共通課題になるはず。ノウハウを蓄積していきたい」と話す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年12月19日 更新)

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