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(5)これからの医療のあり方~在宅医療~ 倉敷スイートホスピタル外来・在宅医療ステーション科長 浦川麻衣子

浦川麻衣子氏

 日本では2025年に団塊の世代全員が75歳以上となり、75歳以上の後期高齢者が全人口の18%を占めることが予測されています。住み慣れた地域で健康に過ごすためにも、「かかりつけ医」を持つことが必要です。地域の方々が困った時に医療機関での診察がスムーズに受けられるようつながりを持つことは、私たちの生活においてとても大切なことです。

 病院の診療には大きく分けると入院と外来の二つが一般的ですが、通院が困難な患者が利用できる在宅医療(訪問診療や往診)による診療もあります。在宅医療では医師と看護師が直接自宅や施設へ訪問し、診療を行うことができることから、高齢化が進む中でニーズが増えると言われています。

 患者本人がこれからどのような医療・治療を受けたいか、どのように暮らしたいかに応じた選択を支えることが医療機関にも求められる中、少しずつではありますが、当院でも在宅医療を選択される方が増えてきております。在宅医療では住み慣れた場所で普段の暮らしをしながら、医療従事者が関わり、医療ケアの継続・支援が可能となります。

 自宅や施設での医療ケアには不安が生じることもありますが、専門職が連携を図る体制を整えることで安心した在宅療養が継続できます。

 当院では内科、専門科(形成外科・皮膚科・泌尿器科・耳鼻咽喉科)の在宅医療を提供しており、その中の一事例をご紹介します。

 当院外来受診で末期がんと診断され、本人が自宅で療養を希望されましたが、家族は急な在宅での介護に不安があったため、家族も交えて話し合いを行い、月2回の定期的な訪問診療に加え、不安な時や急変時は電話相談や緊急往診にて対応できることをお伝えすることで安心して在宅医療を選択されました。

 また、ケアマネジャーと連携し、今後どのような生活を送りたいかの希望に合わせたケアプランの作成を依頼しました。その後、訪問看護ステーションへ日々の健康状態の観察、医療処置、服薬管理、緊急時の対応を依頼しました。

 日常的にさまざまな事業所と連携を図りながら本人、家族の気持ちも含めて医療面でのサポートをさせていただき、数カ月ではありましたが、最期は自宅で永眠されました。

 このように在宅医療では、本人、家族、各専門職と連携を図ることで最期まで自宅で本人らしい暮らしが可能となります。

 医療機関はさまざまなニーズに柔軟に医療サービスの提供が行えるよう関連機関と連携を図ることが重要になり、在宅医療は今後一層求められるサービスの一つになると考えます。医療の機能はさまざまではありますが、自分らしく住み慣れた場所で安心した生活を継続していくためには、患者、家族の意向に沿った選択が最も大切なことです。

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 倉敷スイートホスピタル(086―463―7111)

 うらかわ・まいこ 2001年に倉敷広済病院入職後、倉敷看護専門学校第二看護学科にて看護師免許取得。同院を経て12年から倉敷スイートホスピタル勤務。18年7月から外来科長。23年4月から現職。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2024年01月15日 更新)

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