文字 

コロナ禍で「フレイル」増加 要介護前段階 運動、食事で対策を

「コロナフレイル」が増えていると指摘する杉本副院長

 加齢により心身の機能が衰えて要介護の前段階となっている「フレイル(虚弱)」。川崎医科大高齢者医療センター(岡山市北区中山下)の杉本研副院長(老年医学)は、新型コロナウイルス禍で外出や人との交流を控えてきたことで「『コロナフレイル』の患者が増えている」と指摘。「要介護になる前に運動や食事で適切に対応すれば元に戻る可能性は高い。今からでも遅くない」と呼びかける。2月1日はフレイルの日―。

 フレイルとは、2014年に日本老年医学会が提唱した評価概念。要介護とは異なり、この時点で適切な対策をすると改善の可能性が高い。60歳前後から増え、80歳代では3~4割いるとみられている。

 診断のチェック項目は、半年で2キロ以上体重が減った▽青信号のうちに横断歩道が渡りきれないほど歩くスピードが落ちた▽握力が低下してよく物を落とすようになった―などの五つ。三つ以上当てはまるとフレイルとされる。対策を講じなければ2年で約半数が要介護になるといわれている。

 コロナ禍で外出を制限したことで筋力が落ち、動かないために体をつくる食事の量も減るという悪循環に陥っている人が多い。さらに人との交流が途絶えたために意欲が湧かなくなるといった精神的ダメージもある。本人も家族も「年を取ったから、こんなものだろう」と諦めているケースが目立つ。

 まずは運動習慣を身に付けてほしい。座って太ももを上げる動作やラジオ体操など、家の中でできる運動を継続するだけでも体の変化が実感できるはず。体を動かすと自然と食事量が増え、いい循環ができる。3食とも肉や魚、豆類などのタンパク質を取ることを勧めている。特に朝食で摂取して日中運動すれば筋力アップにつながる。

 家族ら周囲は一緒に買い物や旅行に行くなど、外出の機会をつくってほしい。同居人以外とのコミュニケーションを取ったり、人前に出たりすることで「しっかりしなければ」との思いが生まれ、運動や食事に意欲的になれる。フレイルの日を機に、自身や家族の健康状態や生活習慣を見つめ直してほしい。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2024年01月31日 更新)

ページトップへ

ページトップへ