岡山中央病院ウィミンズメディカルセンター開設25年 女性の生涯 健康支える
ウィミンズメディカルセンターで診療を担う(左から)樹下、大岩、今田、金重、伊賀、三枝医師
治療方針を話し合う産婦人科の伊賀医師(左)と三枝医師
手術支援ロボットを駆使して手術をする泌尿器科の大岩医師
乳がんの手術をする樹下医師(左)と今田医師
金重恵美子副院長
センターは、1999年に病院が現在地へ移転したのに伴い開設された。思春期から老年期に至るまでそれぞれのライフステージで起こる病気の治療と、予防を通じた健康増進を支援しようと、金重恵美子副院長が発案した。心のケアを含めた全人的な医療を目指している。
■有数の分娩実績
産婦人科は岡山県内有数の分娩(ぶんべん)数を誇り、麻酔で出産の痛みを和らげる無痛分娩も行っている。事前に出産日を決めて陣痛促進剤で陣痛を計画的に促す施設が多い中、陣痛が自然に始まるのを待って24時間対応しているのが特徴だ。
高齢出産の増加に伴い需要が高まっている遺伝カウンセリング外来も開設している。クアトロテスト、NIPT(新型出生前診断)といった方法で、ダウン症や18トリソミーなどを調べる。三枝資枝医師は「検査を迷っている患者さんが自己決定できるよう、丁寧な説明を心がけている」と言う。
同科の金重副院長と伊賀美穂医師は、女性特有の病気を予防医学的観点から包括的に取り扱う知識と技能を習得した女性ヘルスケア専門医の資格を持つ。県内の有資格者は約25人しかおらず、同院は複数の専門医がいる数少ない施設の一つに数えられる。
伊賀医師は「さまざまな選択肢の中から最適な治療につないでいくことを目標にしている」と話す。
■乳がん検診に尽力
乳腺外科による乳がん検診は県内有数の実績がある。今田孝子医師、樹下真希医師に加え、マンモグラフィーと超音波を担当する診療放射線技師6人、臨床検査技師4人の全員が女性である。
無痛MRI乳がん検査も19年から行っている。痛みがないのはもちろん、服を着たまま受けることができ、被ばくもない。全国で約60施設しか導入されていない検査だ。
乳がんの術後に行う内分泌療法が閉経後の子宮体がんのリスクを高めることなどから、懸念される人にはがん検診を受けるよう積極的に促している。
産後の乳腺炎に悩む人の受診も多い。今田、樹下両医師は「他院で出産された方の受診も歓迎する。病院の助産師とともに迅速に対応する」と約束する。
■治療の選択可能
泌尿器科では、大岩裕子医師が尿路結石やぼうこうがん、骨盤臓器脱の治療を行う。女性医師として、同じ女性が安心して受診できることを目指している。
子宮やぼうこうが膣(ちつ)から出てしまう骨盤臓器脱に関して、同院は国内で主に行われている複数の手術を行うことができ、大岩医師と産婦人科の伊賀医師らが協議して術式を決めている。
大岩医師は「自分に最も合う治療を選べるという点で患者のメリットは大きい」と強調する。
骨盤臓器脱や尿失禁、下腹部の痛みなどを診療する「ウロギネ外来」も、産婦人科と泌尿器科が連携して開設している。
このほか、同センター以外の診療科にも複数の女性医師がおり、さまざまな疾患に対応している。女性医師たちは「女性特有の病気なら岡山中央病院と言われるように最善を尽くす」と口をそろえる。
金重副院長に聞く 「対話の医療を実践」
ウィミンズメディカルセンターを立ち上げた理由や意義、これまでの成果などを発案者の金重恵美子副院長に聞いた。
―センターを設けた理由は。
自分自身の更年期のことを独学で学ぶうち、日本の女性の更年期医療が先進国の中で非常に遅れていることに気付いた。40歳ごろから急激に低下する女性ホルモンの作用などを理解してもらいながら、女性の生涯にわたる健康を支援することが重要だと考えた。
―運営面で女性に配慮している点は。
病院に併設するセントラル・クリニック伊島の女性専用フロアには婦人科、乳腺外科の他、心療内科と形成外科を設けており、男性と顔を合わせることがない。出産前後の人と不妊治療をする人も一緒にならないようにしている。
―どのような理念でセンターを運営してきたか。
思春期から老年期まで女性の一生を通じた健康支援、心と体の両面からのサポート、患者さん一人一人に起こりうる更年期障害と骨粗しょう症の予防に力を入れてきた。
―今後のセンター運営で心がけたいことは。
心の通った対話の医療を実践したい。さまざまな要因で心身の不調を抱える人にとって頼りにされる施設でありたい。そのために、一人一人の医師が患者の思いを受け止められる能力と専門性を磨いていくことがますます重要だ。
(2024年03月19日 更新)