文字 

前立腺がん 診断と治療テーマに市民公開講座 岡山赤十字病院

岡山赤十字病院で開かれた前立腺がんの市民公開講座

竹中皇氏

甲斐誠二氏

 前立腺がんの診断と治療をテーマにした岡山赤十字病院(岡山市北区青江)主催の市民公開講座が3月16日、同院で開かれた。泌尿器科の竹中皇(ただす)部長が診断、甲斐誠二副部長が治療について解説した。2医師の講演要旨を紹介する。


 前立腺がん 男性のみにある臓器で、ぼうこうの下に位置し尿道の周りを取り囲んでいる。国内で年間に約1万人が罹患し、60歳を過ぎると発症が急増する。高齢男性の3割は進行せずに命に関わらない潜在がんを持つとされるが、発見が遅れると命に関わる悪性のものもある。



「診断」竹中皇泌尿器科部長
定期的PSA検査必要

 前立腺は男性のぼうこう出口の尿道を取り巻いている組織で、肥大すると内部の尿道が圧迫されて排尿障害が起こる。前立腺がんは男性のがんでは最も多い。遺伝的要因もあり、近親者に前立腺がんにかかった人が2人いる場合の罹患(りかん)率は、近親者に罹患者が1人もいない場合の5倍に及ぶ。

 PSA検査や直腸診、MRI、超音波検査でスクリーニングをし、疑いがあれば組織を採取する生検をして確定診断をする。そして、CTや骨への転移の有無を調べる骨シンチグラフィーなどで進行度を確認する。

 PSAとは前立腺に特異的なタンパク質の一種で、検査による値が高いほど罹患率が高い。確定診断をするための生検は前立腺組織を10カ所ほど採取して、がん細胞の有無や悪性度を調べる。ただ、採取しなかった場所にがんがある可能性もあり、結果が陰性だったとしてもがんが100%ないという証明にはならない。やはりPSAによる定期的な経過観察が必要だ。60歳を過ぎたら検査を受け、70歳以上なら毎年検査をした方がよい。

 前立腺がんと診断されたら、骨転移の有無などを調べて治療方針を決める。進行が遅いため、生命にかかわらないケースもある。必ずしも悲観ばかりすることはない。

 前立腺がんの診断では、がんの悪性度が重要だ。グリーソン分類という方法で悪性度を数値化して評価する。スコアが高いほどがんの悪性度は高くなる。


「治療」 甲斐誠二泌尿器科副部長
早期は手術、放射線療法

 前立腺がんにはいくつかの治療法がある。内分泌療法は、男性ホルモンの働きを抑えてがん細胞の増殖を抑制する全身的な治療法である。転移があったり根治療法が困難だったりする場合に適応する。体への負担が小さく、手術や放射線治療の前後に組み合わせることもある。

 化学療法は、ホルモン療法が効かなくなった場合のほか、進行がんの最初の治療として選択することがある。

 手術は主に75歳以下で早期に見つかった場合に行う。前立腺と精のうを摘出し、ぼうこうと尿道を縫合する。根治する半面、出血や尿失禁、勃起不全などが起きる。術後、PSAはゼロになるので、0・2を超えると再発とみなしてホルモン療法や放射線療法を行う。

 放射線療法は早期がんに行うのが一般的だが、局所進行がんに対して内分泌療法を併用することもある。がんに対して体の外から放射線を当てる外照射と、放射線を出す物質(線源)を体の中に入れて内部から放射線を当てる小線源療法などの内照射がある。合併症が少ないことや心臓疾患などがあっても行える半面、外照射は治療に約8週間もかかり、内照射は適応症例が限られる。術後、PSAはゼロにならないので、最低値から2以上の上昇があった場合に再発とみなしホルモン療法をする。

 がんが早期であるほど治療の選択肢は多い。検査を受けて早期発見に努めてほしい。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2024年04月02日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ