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神経幹細胞移植し脳梗塞治療 成体ラットで初成功  岡山大教授らグループ 再生医療実現へ成果

伊達勲教授

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の伊達勲教授(脳神経外科学)らのグループは、脳梗塞(こうそく)を起こしたラットの脳に、別の成体のラットから神経のもとになる「神経幹細胞」を取り出して移植し、梗塞範囲の抑制やまひなどの運動障害を改善させることに成功した。胎児から取り出した神経幹細胞での成功例はあるが、成体からの移植で治療効果を確認したのは初めて。再生医療の実現に近づく成果として注目される。

 脳梗塞は、動脈硬化などで脳血管の一部が詰まり、脳細胞が壊死(えし)。梗塞場所によって言語障害や運動障害などが起きる。

 同グループの新郷哲郎助手、亀田雅博医師らは、成体ラットの脳内にある脳室下帯とよばれる部分から、一ミリ四方の神経幹細胞のかたまりを採取。細胞を活性化させる働きのあるタンパク質の遺伝子を加え、試験管内での大量培養に成功した。

 この細胞を、梗塞部分と正常部分の境に注射で移植。約一カ月後に観察したところ、移植ラットは、梗塞範囲が無治療のラットと比べ約三分の二に抑制された。回転棒にラットを乗せ、落ちるまでの時間を計測する実験でも、無治療ラットは手足のまひですぐ落下したが、移植ラットは数分間乗ることができた。

 移植した神経幹細胞から新しい神経細胞ができて梗塞の広がりを抑え込むと同時に、神経幹細胞から脳細胞の栄養となるタンパク質が放出され、細胞が壊死しにくい状態になったとみられる。

 同分野の研究は、再生能力が強い死亡した胎児の神経幹細胞を使うのが主流だが、倫理面や拒絶反応など安全面での課題があった。

 伊達教授は「成体からの細胞でも治療可能なことを示すことができ、将来的には患者の細胞を自分に移植するより安全な『自家移植』を目指したい」としている。

 今後は、同様に神経細胞が侵されるパーキンソン病などにも応用していく。研究成果は、十月に京都市で開かれる第六十五回日本脳神経外科学会総会で発表する。


実用化へ前進

 河瀬斌慶応義塾大教授(脳神経外科学、日本再生医療学会・臨床試験委員長)の話 成体の神経幹細胞が、胎児と比べても見劣りせず、移植に使える可能性を示した点は大きい。研究成果は、実用化に向け大きく前進させるものといえる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年08月29日 更新)

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