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猛暑列島 熱中症予防 氏家岡山大大学院教授に聞く 35度以上 運動中止を

氏家良人教授

 連日の猛暑で熱中症で病院に搬送される人が相次いでいる。命を落とすケースもあるだけに一人ひとりの備えが大切だ。熱中症のメカニズムや予防策について、救急医学が専門の氏家良人・岡山大大学院医歯薬学総合研究科教授(58)に聞いた。

 ―熱中症はどうやって起きるのか。

 「暑さで発汗が進んで体内の水分や塩分、血管の血しょうが減少。その結果、血圧が低下して血管が収縮し、熱が放散されず体温が上昇して、めまいや吐き気を催したり意識を失う。状態が悪化すれば、視床下部にある体温中枢が機能せず、心臓や肝臓の機能が衰えるなど、急速に多臓器不全の状態となり、生命にかかわってくる」

 ―熱中症の症状は。

 「症状の軽いものから順に、運動中に筋肉がけいれんを起こす熱けいれん、ふらっとめまいを起こしたり意識を失う熱疲労、そして一般的に知られる熱射病と、三つの病態に分けられる。だが、熱中症がどういう頻度で発生するかという科学的なデータはない。熱けいれんから熱疲労を経て熱射病へと段階を追って進行するとは限らず、突然、熱射病で意識を失うこともある」

 ―どういう人が熱中症になりやすいのか。

 「体力のない乳幼児と高齢者が多い。乳幼児は体温調節機能が未発達な上、体重の割に多くの水分を必要とするため。高齢者はさまざまな身体的機能の衰えが要因と考えられる。高齢で体が不自由な人は室内を閉め切らないよう注意が必要。炎天下でクラブ活動などを行う若者も体力を過信しないでほしい」

 ―気温が何度ぐらいになれば、熱中症のリスクが高まるのか。

 「三五度を超えると体から熱が逃げにくくなり、危険性が高まる。運動は中止すべきだろう。三四度以下でも、体力のない人や暑さに慣れていない人は運動をやめた方がいい。気温だけでなく湿度も関係し、湿度が高いほど危険性は高くなる」

 「熱中症になると体温は四〇―四二度まで上がり、四一度を超えると生命に危険が生じる。激しいスポーツや労働をした場合は三十分から一時間以内、子どもを熱い車内に放置した場合はわずか三十分程度で危険な状態になる」

 ―予防策は。

 「外出の際は帽子や日傘で直射日光を避け、通気性のある服を身に着けるよう心掛けて。室内にいる場合はできるだけエアコンをかけて快適に保ってほしい。運動をする際はこまめに休憩し、最低でも三十分に一度は二〇―二〇〇ミリリットルの水分を取るべき。水分はナトリウムを含んだスポーツドリンクが適している」

 「熱射病まで進んでしまうと、二十分以内に全身を冷やさないと生命に危険が及ぶ。単に体表面を冷やすのではなく、体内から冷やす本格的な医学的処置が必要なため、救急車を呼んで医療機関に搬送してほしい」
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年08月18日 更新)

タグ: 健康岡山大学病院

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