岡山の周産期救急医療 手厚さ全国トップ級 県南2ヵ所の総合センター核に連携
総合周産期母子医療センターに指定されている倉敷中央病院(倉敷市美和)の新生児集中治療室(NICU)。保育器にいるのは、1000グラム未満で生まれた超低出生体重児や心臓に障害のある新生児たちだ。「早期の胎盤剥離(はくり)など緊急性の高い妊婦が県内外から運び込まれる。ベッドも人的にも余裕はないが、症状が改善した新生児をICUから移すなどし、受け入れは断らない」と渡部晋一・同センター主任部長は言う。
周産期救急医療を担う県内のネットワークは、24時間対応の倉敷中央病院、国立病院機構岡山医療センター(岡山市田益)の2つの総合センターを中心に、4カ所の地域周産期母子医療センター(岡山大、岡山赤十字、川崎医科大付属、津山中央病院)と地域の産科医院などで構成する。かかりつけ医が病状に応じ、各センターに照会して搬送する仕組みで「全国トップ級の手厚い体制」(県健康対策課)という。
ヘリも活用
2007年度の6センターへの救急搬送件数(同課調べ)は、母体、新生児合わせて513件。このうち2つの総合センターは351件と全体の68%に上っている。
センター数の少ない県北からは高速道路を活用。新見市からは主に岡山医療センターへ、美作市からは同センターか津山中央病院に送る。「一刻を争う場合はドクターヘリを使うことも想定している」(同課)という。
顔の見える関係
総合センターの受け入れ体制はどうか。
母体・胎児集中治療室(MFICU)は両センターにそれぞれ6床あり、NICUは岡山医療センター18、倉敷中央15床。当直は後期研修医を含め倉敷中央が1人、岡山医療センターは1人または2人で行っている。
両総合センターのICU床も空きは少なく、満床もしばしば。それでも多田克彦・岡山医療センター産婦人科医長は「綿密に情報交換し、互いに“顔の見える関係”を築いている。どちらかがベッドに都合をつける体制にある」と言う。
有効手だてを
全国的に見ても高度な救急体制をとる県内だが、産科、小児科医不足が忍び寄る。
いずれも若手の医師や研修医から敬遠されている診療科。当直など長時間勤務に起因する身体、精神的な負担に訴訟のリスク、給与、待遇面など複数の要因が絡み合い、後継医師が足りないのが現実だ。
当直回数は倉敷中央病院が1カ月に3、4回、岡山医療センターは5回のこともあり、体制運用は医師のハードワークに支えられている面は否めない。
「今の医療水準の維持、ICU増床には人材の確保、育成が不可欠」と多田医長は強調する。渡部主任部長も「職場環境の改善をはじめ、結婚や子育てで現場を離れた女性医師を復帰させるなど、有効な手だてを打つことが急務」としている。
(2008年11月14日 更新)