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5年目迎えた新医師臨床研修制度 病院間で人気に偏り 内容充実の病院へ集中 大半定員割れ

救急外来の症例について研修医に説明する倉敷中央病院の福岡医師教育研修部長(右から2人目)。各病院とも研修内容の充実が医師確保の鍵を握る

 研修医に基本的な診療能力を身に付けさせることを目的に始まった「新医師臨床研修制度」が5年目に入った。研修内容の充実した総合病院に人気が集中し、大半が定員割れになるなど岡山県内でも影響が顕在化。高度先進医療機関である岡山大病院(岡山市)も「専門性が高く、研修には不向き」と敬遠される傾向が続いている。

 「高度な専門医療を提供できる強みを、研修充実に生かしたい」。年間1万件を超す手術など国内トップレベルの臨床環境を持つ倉敷中央病院(倉敷市)の福岡敏雄・医師教育研修部長はこう話す。

 研修医の受け入れ枠が30人と多いため、来春は若干定員を割り込む見込みだが、県内では高い人気を誇る。「救急外来をしたい」との若手医師の希望を踏まえた研修の見直しなど、ニーズに対応したプログラム構築を図る。

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 県内で採用された研修医は制度前の2003年度が146人、本年度は150人とほぼ同水準で推移。だが、研修内容や指導体制が整った病院に偏り、大部分は研修医確保に四苦八苦している。

 病院と研修医双方の意向を反映させて研修先を決める「マッチング」では、玉野市民病院(玉野市)が03年度から6年連続でゼロ。本年度は県内17病院のうち12病院が定員割れした。

 岡山市内の臨床研修病院の病院長は「研修医がどれだけ集まるかで病院は評価される。研修医も2年目ぐらいから戦力になるため、確保できなければ病院機能の低下は避けられない」と打ち明ける。

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 本年度、募集定員に対するマッチ者の割合を示す充足率が37・5%と、全国の大学病院でワースト7の岡山大病院。マッチング初年度の03年度から定員割れが続く。

 同大病院の森田潔病院長は「充足率の低さには責任を感じるが、大学病院は専門医が高度先進医療を提供するための場所。そもそも総合医の育成にはなじまない」と説明する。

 同大医学部卒業生の約6割は同大関連病院で研修を受けているが、2年後に大学に戻ったのは本年度で39・2%にとどまる。大学の基礎研究機能低下や医師不足を懸念する声もある。

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 こうした中、研修医受け入れの格差が医師の偏在を招いているなどとして、研修の在り方を見直す動きも出ている。

 厚生労働省と文部科学省は9月に制度検討会を立ち上げ、年内に結論をまとめる方針。同大病院など一部の大学病院では来春以降、専門診療科に特化した臨床研修プログラムが認められた。

 県南部の総合病院で研修医の指導を受け持つ医師は、総合的な診療能力を高める制度の趣旨に肯定的な考えを示し、こう指摘する。

 「いったん学生たちに選択の自由を認めた以上、流れを引き戻すことは現実的ではない。むしろ研修の中身をどう充実させていくかに、国や現場は知恵を絞るべきだろう」


 新医師臨床研修制度 2004年4月から医師国家試験合格者に2年間の臨床研修を義務付けた。基本的な診療能力を身に付けることなどを狙いに、全国の大学病院と厚生労働省が指定した臨床研修病院で内科や外科、小児科、産婦人科、精神科、救急など複数科を経験する。学生と病院双方の希望を基に「マッチング」で研修先を決める。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年11月20日 更新)

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