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岡山県内の病院で看護師不足が深刻化 都市圏に人材流出 「大規模」志向強まる

看護師不足に拍車がかかる岡山県内。各病院とも人員の確保に苦慮している(本文と写真は関係ありません)

 慢性的といわれる看護師不足が岡山県など地方で深刻化している。2006年4月の診療報酬改定で、手厚く看護師を配置した病院の報酬を増やす「7対1基準」が創設されたのを境に、東京など都市圏の大規模病院に人材が流れるなどしたためだ。看護師も働きやすい環境を求めて大規模病院志向が強まっており、地域の中でも“偏在化”が進んでいる。

 岡山県北にある病床数約80の病院。一般・療養病棟合わせて約30人の看護師が働く。一般病棟は患者13人に看護師1人の配置になっている。入院患者の9割近くが65歳以上。病院長(63)は「1人当たりの介護、看護業務量は確実に増え、看護師は足りない」とぼやく。

 06年の診療報酬改定は看護師の負担軽減が狙い。入院患者7人に看護師1人を配置した病院に、最高ランクの報酬をつけた。だが、体力のある病院が増収をもくろんで人材を囲い込み、結果として中小病院の人手不足に拍車を掛けた。

 この病院は現状を上回る「10対1」を目標に、4月採用予定の看護師を08年8月と12月に2度募集。隣県の看護学校にも足を運び、ホームページなどでも呼び掛けたが、応募はゼロだった。

しわ寄せ

 岡山県内で働く看護師は約1万6600人(06年12月末現在)。10年前の約1・4倍に増えているが、病院間の格差は徐々に顕著となっている。

 関係者の話では、診療報酬改定間もない06年秋、東京や大阪の病院関係者が岡山市内に泊まり込み、面接だけで看護学生を大量に採用。医療機関が集中する県南でも人手不足から07年度以降、病床を半減させたり、一部病棟を閉鎖したケースもあるという。

 岡山県病院協会の土井章弘会長は「100床前後の中小病院にしわ寄せがきている。看護師不足が深刻化すれば医療サービスの低下を招きかねず、経営の根幹にかかわる」と県内格差を指摘する。

 一方、看護師の現状をよく知る看護関係者は「人手不足は経営だけでなく、現場の看護師に大きな負担を強いている」と言う。

掘り起こし

 「超過勤務は当たり前。夜勤の看護師も少なく、いつミスをしないか不安」。50床規模の岡山市内の病院で働く看護師(27)は話す。肉親の介護などを理由に3月末で退職するが、「現状から解放されると思うと、ほっとする」と本音が口をついた。

 日本看護協会の調査(06年)でも、未就業の看護職員の21・9%が「勤務時間が長い・超過勤務が多い」を離職理由に挙げた。

 このため、現場を離れた「潜在看護師」の掘り起こしが重要視され、岡山県も本腰を入れ始めた。

 08年度から未就業者らを対象に岡山市で毎月、看護技術講習会を開催。県ナースセンターに委託し、意欲がある女性をサポートしている。今後は県北でも開く予定だ。

 看護師の確保・定着対策を推進する行動計画(06年12月―10年3月)を策定した県看護協会も、各病院の職場環境整備の実態把握へ調査を始めた。

環境整備を

 「多様な働き方をどれだけ許容できるかが問われている」。30年のベテラン、児島中央病院(倉敷市児島小川町)の福田正子看護部長(54)は言う。

 同病院は子育てしながら働けるよう、約25年前に24時間体制の院内保育所を整備。医師も含めて延べ161人が利用してきた。自身もその1人という福田部長は「看護師が子育てなど家庭と仕事が両立できる環境整備へ、より力を入れたい」と話す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年01月28日 更新)

タグ: 医療・話題

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