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道化師の表現力でストレスに対処 岡山で広がる「クラウン思考」

背中からダイブする1人をチームの仲間が受け止める。互いの勇気や信頼が試される=2月22日、岡山旭東病院

 道化師の思考法、表現力をストレス対処に生かしたり、闘病する子どもたちに笑いと遊びを届ける取り組みが岡山で広がっている。市民参加の道化教室は7年目を迎え、岡山大病院(岡山市鹿田町)の小児科病棟では、クリニクラウン(臨床道化師)の月1度の訪問が定着した。

 参加者がペアを組み、目をつぶって背中と背中を合わせる。上下左右に動き回る相方の体温や息遣い、筋肉の緊張を感じ取り、同調する。リード役を交代し、今度は自分が相方を従えて移動する。そのうちに何となく互いの行動のくせや性格が垣間見えてくる。

 岡山旭東病院(岡山市倉田)を会場に2―3カ月に1度開かれる「おかやまあかいはな道化教室」(土井章弘代表)のワークショップ。兵庫県加古川市から参加した薬剤師小田充恵さん(32)は「発想の転換ができて面白い。1人で調剤する仕事の緊張感のバランスが保てるようになった」と話す。

 講師の塚原成幸(しげゆき)さん(41)はプロの道化師だが、ジャグリング(ボールを使う曲芸)を教えるわけではない。「絶好調の自分を体全体で表現して―今度は絶不調」。言葉を介さず体を使うコミュニケーションを繰り返す。ケアする側とされる側、双方の気持ちを理解することにつながるのだという。

 「笑顔になれる体と環境づくり」を掲げる教室は2002年11月にスタート。毎回、多様な年代、職種の20―30人がワークショップを体験。国立療養所邑久光明園(瀬戸内市)の夏祭り参加などの「課外活動」も活発だ。

 塚原さんはNPO法人・日本クリニクラウン協会(大阪市)の事務局長兼芸術監督を務める。オーディション、訓練・臨床研修、認定試験を通過した専門職のクリニクラウンは現在13人。「クラウン思考」を身につけるワークショップを開くと同時に、昨年6月から加わった岡山大病院を含む全国13の病院の子どもたちを定期訪問している。

 教室はクリニクラウンを養成する場ではないが、啓発普及に協力している。受講者の同大大学院生兵田直子さん(23)は大学祭でクラウンの活動を紹介し、定期訪問実現の橋渡し役を果たした。

 34床の同病院小児科病棟は中四国の小児がん診療の拠点。月1度、2―3時間の訪問は事前告知されず、塚原さんらは2人1組で病室に出向き、子どもたちを楽しませる。小田慈(めぐみ)大学院教授(血液腫瘍(しゅよう)学)は、クラウン訪問がつらい検査や薬をいやがる子どもたちの反応を和らげているという。

 「クラウンがいないときも、子どもたちはわくわくする期待感を持続させている。長い入院生活が単に苦しい治療体験になるのではなく、子どもらしい学びや遊びを保障する機会になる」と評価。直接的な治療行為だけに目を向けがちな医師、看護師らにゆとりを生む効果も指摘している。

 おかやまあかいはな道化教室 次回ワークショップは5月17日に開催予定。高校生以上のだれでも参加できる。参加費3000円。問い合わせは岡山旭東病院(086―276―3231)。日本クリニクラウン協会はクラウン派遣費用を賄う寄付を募っている。詳しくはホームページ(http://www.cliniclowns.jp)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年03月30日 更新)

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