文字 

新見市と医師会が遠隔医療実証実験 在宅患者や家族不安軽減に効果

テレビ電話を使い医師の問診を受ける在宅男性患者(手前)

 新見市や新見医師会などは、テレビ電話の映像を介して医師が患者を診察する遠隔医療の実証実験に取り組んでいる。医師不足の中山間地で暮らす在宅療養の患者や家族の不安軽減につながるなどの効果が上がっており、実験終了となる来年3月以降も継続する方針。

 名称は「新見あんしんねっと事業」。市内全戸に光ファイバー網を張り巡らした同市のラストワンマイル事業を活用した全国でも珍しい試みで、市内4病院、16診療所、11介護施設にテレビ電話を設置。専用の携帯型テレビ電話を持った訪問看護師らが在宅療養の患者宅に出向き、病院や診療所などとインターネットで接続、画面を通して主治医とやりとりする。

 現在、約20人の患者宅で月1、2回程度、往診と併用して実験を実施。医師が床ずれを防ぐ処置を訪問看護師に指示したり、患者に体調などを問いかけ、治療方針の参考にしている。医師同士の相談なども含め、11月末までに400回以上の実験を重ねている。

 医療生協阿新診療所の山口義生所長(54)は「医師1人が往診できる頻度には限界があり、テレビ電話を使うことで効率化が図れる。専門医との相談などで医療の質向上にもつながる」と説明。在宅患者で右半身不随の三上功さん(75)=同市新見=は「病院に行くのも大変。(テレビ電話を使うことで)医師との会話が増えて安心できる」と喜ぶ。

 ただ、インターネット接続料金の負担や現在の医療制度で認められていない遠隔医療での診療報酬など、実証実験終了後の課題も少なくない。新見医師会の太田隆正会長(60)は「行政や介護施設などとも連携し、地域ぐるみで問題解決に努める。3月以降も実験を続けて有効性を証明し、中山間地の医師不足を補うシステムとして確立させたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年12月28日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ