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公害患者の余命 5年強(全国平均比)短い 水島コンビナート・病歴追跡調査 死因の4割が呼吸器

倉敷公害患者の死因(グラフ)

 倉敷公害訴訟の元原告らでつくる水島地域環境再生財団(倉敷市水島西栄町)と水島協同病院(同市水島南春日町)は十七日、倉敷市・水島コンビナートの公害で亡くなった五百一人の死因や病歴を追った「公害死亡患者遡及(そきゅう)調査」の結果を発表した。発病から死亡までの追跡調査は全国的に珍しく、患者の平均余命が全国の平均余命より五年以上短いことなどを裏付けた。

 調査結果によると、公害患者の死亡者数は一九九四年(三十四人)にピークを迎え、平均死亡年齢は七五・三歳。公害認定後の余命は、全国の平均余命と比較して男性で五・一年、女性で七・三年短命だった。

 死因別では、呼吸器疾患が二百十六人と四割を占め、うち慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(慢性気管支炎と肺気腫の合併症)が六十五人で最も多く、肺炎(五十七人)、気管支ぜんそく(二十五人)と続く。肺炎の頻度は全国平均の約二倍と高く、患者が軽い疾患でも続発・合併症で危険な状態になっていたことも浮き彫りになった。

 寝たきりで亡くなった患者は八十五人で、全体の17%に上った。

 調査は、患者の高齢化が進む中で病気の実態を医学的に記録することや、患者の治療・介護に役立てることを狙いに五年がかりで実施。一九七六年から二〇〇〇年までに同病院で死亡診断書を出した五百一人について、公害認定病名と治療経過▽既往歴▽死因▽解剖所見―など七項目の個人ファイル(匿名)を作成し、統計を取った。

 調査した同病院の松岡健一名誉院長(78)は「薬の副作用で免疫力が低下し、肺炎やヘルペスを多発するなど、これまでの処置の問題点も明らかになった。患者にがんが多いことも分かり、今後も追跡、分析を続けたい」と話している。

 調査結果はA4判、三冊組で千部製本。県内を中心に全国の公害発生地域の医師に配るほか、希望者には五千円で販売する。問い合わせは同財団(086―440―0121)。

ズーム

 倉敷公害訴訟 水島コンビナートが本格稼働した1965年ごろから、呼吸器障害を訴える住民が増加。83年、患者と遺族が主要企業8社に損害賠償と大気汚染物質排出差し止めを求める裁判を起こした。96年12月和解。被告企業は解決金約14億円の支払いなどに同意した。水島地域環境再生財団によると、認定患者は3835人、うち1571人が死亡している(7月28日現在)。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年11月18日 更新)

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