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肺がん治療について 岡山済生会総合病院3医師に聞く

片岡正文呼吸器病センター長 

 地域がん診療連携拠点病院の一つで、今年1月に新病院での診療が始まった岡山済生会総合病院。今回は肺がんの治療について、3医師に聞いた。

外科手術 器具進歩し胸腔鏡増加 片岡正文呼吸器病センター長

 肺がんは他の臓器のがんに比べ全身に転移しやすく、脳への転移もよく見られる。最近は効果の高い抗がん剤や放射線治療が出てきているが、やはり根治できる確率が高いのは、転移がない段階での外科手術だ。

 ただ、肺がんの初期は症状に乏しく、がんが見つかった段階で既に転移しているなど手術できないケースが多い。手術の適応となるのは50%程度。

 通常手術の対象となるのは転移が原発巣と同じ側の縦隔までにとどまるIIIa期までだが、状況によってはIIIb期でも手術を行うこともある。しかし、III期の症例では放射線治療や化学療法が良い場合や、それらと手術の組み合わせが必要なこともあり、それぞれの症例で最適な治療戦略を立てることが重要だ。各科の医師らと慎重に検討し、治療方針を決めている。

 肺は右肺が上中下3葉、左肺が上下2葉に分かれ、さらに右10、左8の「区域」に分けられる。肺がんの手術では、葉切除が標準だが、区域、または部分切除を行うこともある。葉切除、区域切除では、転移が起きやすい所属リンパ節も一緒に取る。

 実際の手術では心臓から直接つながる肺動脈、肺静脈を剥離した上で切り離さなければならない。この処理の間にもし血管が傷つくと大出血を招くため、最も慎重を要する手技となる。がんが血管についている場合は特に神経を使う。

 肺は空気中の酸素を血液中に取り込む重要な臓器。切除範囲を小さくして肺機能を温存できればそれに越したことはない。肺の切除範囲を縮小する場合、再発率がやや上昇するものの、低肺機能や年齢などが原因でQOL(生活の質)が大きく損なわれると予想される場合に行う消極的縮小手術と、縮小しても再発率が変わらない早期の段階と判断して行う積極的縮小手術を区別して考えている。

 画像診断の発達で早期がんが多く見つかるようになったことや手術器具の進歩もあり、胸腔(きょうくう)鏡手術が増加している。現在は肺がん手術全体の7~8割を胸腔鏡で行っている。

 最近当院で取り組んでいる多職種による術前サポート外来の結果を分析すると、患者の気持ちを前向きに導くことが術後の早期回復、早期退院に結びつくことが分かった。

 技術の進歩で早期の肺がんも見つけられるようになった。ぜひ定期的に健診を受け、早期の段階で肺がんを発見し積極的に治療を受けてほしい。

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※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年03月07日 更新)

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