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腎臓病対策へ症例収集 国内初のデータベース構築進む 岡山大大学院の槇野、杉山教授

 岡山大大学院の槇野博史(腎・免疫・内分泌代謝内科学)、杉山斉(慢性腎臓病対策腎不全治療学)の両教授が、全国の医療機関から腎臓病症例を集める国内初のデータベース「腎臓病総合レジストリー(登録簿)」の構築を進めている。槇野教授が理事長を務める日本腎臓学会のプロジェクト。腎臓病患者の実態を把握することで、新たな治療法の開発や増え続ける慢性腎臓病の予防などに役立てたい考え。

 全国の病院に呼び掛け、今年1月から事務局の岡山大がインターネットで登録を受け付けているほか、データの閲覧も開始。これまでに約2700例が寄せられており、2011年まで4万―6万例を集める計画。

 レジストリーでは、進行すれば腎不全となるIgA腎症、尿にタンパクが漏れる難治性ネフローゼ症候群など、さまざまな病気の症例を収集。症例の解析により治療や薬の効果を検証、新たな治療法の研究につなげる。病種別に患者数や年代、男女比の把握が可能なため、国内に1300万人以上と推計される慢性腎臓病の傾向を分析し、予防策を講じることも期待できるという。

 「従来は国内に腎臓病のレジストリーがなく、海外で構築された外国人のデータを日本人に当てはめて治療方針を立ててきた。これからは日本人の特徴に合わせた対策が取れる」と杉山教授は指摘する。

 腎臓病のレジストリーと同様の取り組みは、がんの分野でも進められているが、「個人情報やデータをまとめる人材面が課題」(厚生労働省)となって、全国規模のデータベースにはなっていないという。

 槇野教授は「収集したデータを解析することで、検査態勢や治療法などを見直すことができ、腎不全の進行防止につながる。早期発見、治療にレジストリーは重要な役割を果たす」と話している。

ズーム 慢性腎臓病

 腎炎や糖尿病、高血圧などを原因に、腎臓の障害や機能低下が慢性的に続く病気。放置しておくと腎不全になり、人工透析、腎移植を受けなければならなくなる。患者は成人の8人に1人の割合とされる。人工透析を受ける人は毎年、新たに約1万人ずつ増えており、2007年末時点で国内の慢性透析患者は約27万5000人に上る。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年03月18日 更新)

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