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5 けいれん 初の発症なら必ず受診

 二歳の男児が風邪のため急に発熱しました。熱は三九度まで上がり、突然全身を硬くし、手足をがくがく動かすけいれん(ひきつけ)を起こしました。初めてのけいれんでした。呼吸していないように見え、くちびるは紫色になりました。驚いた両親は口の中に無理やり割りばしを入れ、懸命に呼び掛けましたが、反応はありません。救急外来に到着した時にはけいれんは終わり、眠っているように見えました。

   ◇   ◇

 生まれて初めてのけいれんで病院に急行したのは、正しい判断でした。

 病名は熱性けいれん。一歳から四歳ごろまでに発病することが多く、熱の上がりかけによく起こり、六歳ごろまでに自然に止まります。回数は一、二回の人が大多数ですが、もっと多い人や年長になっても繰り返す人もいます。

 熱性けいれんは良性の疾患で、通常発熱時の解熱処置とけいれん止めの 坐薬 ( ざやく ) で対応できます。家族に同じ疾患の人がいることが多いです。比較的まれですが、熱性けいれんの回数が多い人や長時間のけいれんを起こした人、もともと発達に異常のある人などでは、後に無熱時にも発作が起こるてんかんに移行する場合があります。心配しすぎる必要はありませんが、熱性けいれんのある人はかかりつけの小児科医にご相談ください。

 子どもはけいれんを起こすことが多く、その原因はさまざまです。最も多いのは熱性けいれんですが、熱がなくてもけいれんを繰り返す小児てんかんもあります。脳炎・髄膜炎、下痢や 嘔吐 ( おうと ) 、頭部外傷に伴うけいれんもあり、けいれんそのものより、原因疾患により病状は左右されます。

 通常数分以内のけいれんだけで死亡や後遺症の心配はありませんが、けいれん時に嘔吐し、吐物が詰まって窒息することがあります。顔を横に向けて吐物が詰まらないようにします。舌をかみ切ることはありませんので、口の中に物を入れる必要はありませんし、かえって呼吸しにくくなり、危険です。人工呼吸も必要ありません。呼び掛けたり、体に触れたり、場所を移動させても大丈夫です。

 大事なことは慌てずよく観察することです。体は硬いか、手足などがピクピク動いているか、それらの様子に左右差がないか、目が一方を向いているか、呼び掛けに反応があるか、どれくらいの時間続いたかなどです。また、どういう状況(熱の上がりかけ、頭を打った後など)でけいれんが起きたかも大切です。

 生まれて初めてのけいれんでは、熱の有無にかかわらず病院を受診する必要があります。特に一歳までの乳児では要注意です。一方、すでに熱性けいれんと診断されている場合には、けいれんが長く続かない限り(目安は十~十五分以上)救急外来を受診する必要はありません。通常の外来時間に受診してください。

 (大塚頌子・岡山大小児神経科教授)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年11月12日 更新)

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