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第4回 岡山労災病院 アスベスト疾患ブロックセンター 中皮腫を早期に診断

症例を検討するアスベスト疾患ブロックセンターのスタッフ

岸本卓巳副院長

 中皮腫は、原因の多くがアスベストを吸い込むことで、肺を覆う胸膜や胃腸などの腹膜の表面の中皮に発症するがん。胸膜の中皮腫が多い。副院長で国の研究グループのリーダーである岸本卓巳センター長を中心に、早くから検査、治療体制をとり、二〇〇五年には広域拠点となる「アスベスト疾患ブロックセンター」を開設した。

 岡山県内では、総社市の製鉄関連製品工場の退職者で岡山労災病院での受診者の大半から、中皮腫や肺がんのリスクを示す「胸膜プラーク」が見つかり、注目されている。

 昨年、同病院でアスベスト検診を受けた三百十七人のうち、六割超の百九十九人にプラークがあった。これまでに対応したアスベスト関連疾患は、中皮腫五十六例、良性石綿胸水三十七例、石綿肺がん八十六例。

 アスベストを吸ってから中皮腫が発症するまで平均約四十年とされる。国内のアスベスト使用のピークは一九七〇―八〇年代。今後、患者の増加が予想される。「高濃度でのばく露は、若くして発症することもある。早期発見が大切」と岸本副院長は指摘するが診断は難しい。正しい知識、検査方法を知らないと「結核と間違える」など診断を見誤ることもあるという。

 そこで、CT(コンピューター断層撮影)などのほか、胸 腔 ( くう ) 鏡での病変部の観察や組織採取での病理検査で診断する。 腫瘍 ( しゅよう ) の範囲が限定されると、肺と胸膜などを切除する。外科手術ができない場合は投薬治療。〇五年からは中国地方で唯一、同病院で治験が認められた治療薬アリムタ(一般名ペメトレキセド)と抗がん剤シスプラチンを併用している。国は昨年、アリムタの製造販売を承認した。

 新しい早期診断方法の開発にも力を入れている。がんを抑える遺伝子が炭素、水素と結びつき働かなくなる現象「メチル化」と中皮腫発症の関係に着目し、研究している。

 中皮腫などアスベストによる健康被害は労災保険法、アスベスト新法の補償・救済対象となる。このため、医療関係者らを対象に講演や研修会を開いたり、診療ガイドの発行で、早期診断の普及に努めている。電話相談も受け付けている。


◆アスベスト労災認定

 厚生労働省の集計で、仕事中にアスベストを吸い込んで中皮腫や肺がんになり、〇六年度に労災認定されたのは、全国で過去最多の千七百九十六人で、〇五年度(七百二十二人)の約二・五倍だった。認定の疾病別内訳は中皮腫千六人、肺がん七百九十人。


アスベスト健康電話相談

 月―金曜(祝日除く)午後2時―同4時半 (電)086・261・7810
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年02月19日 更新)

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