文字 

(5)脳神経外科医のひも解くめまいの診療 岡山西大寺病院総合診療科(脳神経外科)医長 大西学

大西学氏

 めまいは病院に来院される原因のうち、もっともありふれた訴えの一つです。

 十把一絡(じっぱひとから)げにめまいといいますが、実はめまいの症状も原因も十人十色多種多様であります。起きようとしたら天井がぐるぐる回って動けない。ふわふわして船に乗ってゆられているようだ。気が遠のいて血の気がひく感じがする。ふらつく。等々。

 めまいの症状は回転性めまい(回るめまい)、浮動性めまい(ふわふわめまい)、前失神(気絶しそう)、平衡障害(ふらつき)の4種類です=。加えてめまい以外にものが二重に見える、ろれつがまわりにくい、手足や顔にしびれや麻痺(まひ)がある、まっすぐ歩けない、立っていられない、指を目標の場所にもっていけない等の神経症状を確認することが重要です。

 急にめまいが生じた時、「頭がおかしくなったのではないか?」って不安になることがありますね。脳卒中、脳腫瘍、脳震盪(のうしんとう)など脳に原因があってめまいが生じる可能性は数パーセント程度です。しかし、脳に原因があった場合、命にかかわることもあるので見逃さないことが重要です。めまい以外の神経症状がある場合は必ずMRIやCTで脳の検査をすることが必要です。治療には脳神経系専門医による診療が必要です。

 脳以外にもめまいの原因は多岐にわたります。貧血、薬の副作用、かたこり、不整脈、脱水、自律神経失調、メニエール病、心因性、等々。

 その中で最も多く約半分を占めるのは良性発作性頭位性めまいです。頭の位置や体の向きを変えた時に数秒遅れて1分程度ぐるぐる回るめまいであり、安静にした後、例えば朝起きたとき等に症状がでやすいです。耳の奥にある重力を感じるための前庭から耳石がはがれ回転を感じる三半規管の中に入り込んでしまうことからめまいが発生します=図1。内服薬による治療も効果ありますが、耳石を元の位置に戻すためにしっかり寝返りをうつこと等で治ることがあります。寝返り体操等も紹介されています=図2

 近年注目されているのが片頭痛性めまいです。めまいの原因の1割程度とされています。めまいに付随して光をまぶしく感じたり、音に過敏になったり、キラキラした光が見えるといった症状を認めることがあれば片頭痛性めまいの可能性があります。治療には片頭痛予防薬による発作の予防が効果的です。

 治りやすいめまい、なかなか治らないめまい、多種多様ではありますが、めまいの原因を模索し適した治療を考え、どうしても原因が分からない場合(約3割)には患者さんの症状に寄り添いながらゆっくり症状の緩和をめざします。

     ◇

 岡山西大寺病院(086―943―2211)

 おおにし・まなぶ 岡山大学医学部卒業。同大学病院高度救命センター特任助教、川崎医科大学総合医療センター脳神経外科学2講師などを経て、2020年から岡山西大寺病院総合診療科。医学博士。脳神経外科専門医・指導医、プライマリ・ケアー連合学会認定専門医・指導医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年02月21日 更新)

タグ: 脳・神経

ページトップへ

ページトップへ