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(2)ロコモ予防で運動器の健康を 笠岡第一病院付属診療所 健康増進クラブONE 健康運動指導士 石部豪

石部豪健康運動指導士

 わが国の要介護認定者数(要支援認定者数を含む)は今年3月に561万人を超え、介護保険制度が開始された2000年4月の218万人から、およそ2・6倍に増加しました。

 要支援・要介護になる要因の第1位は「運動器(骨・関節・筋肉など)の障害」です。2010年国民生活基礎調査による有訴者率、傷病別にみた通院者率からも「腰痛症」「肩こり症」、手足の関節が痛むなどの「関節症」といった運動器に関するものが上位を占めています。

 運動器の健康が保たれることで転倒、歩行困難、不安定性など個人の生活の質(QOL)の低下を防ぐことができます。これは高齢者の自立を保つ上でも重要で、外出や社会参加が促進され、介護が必要となる方の割合を減少させることができます。そのため厚生労働省も今年4月から開始された健康日本21(第2次)において、ロコモティブシンドロームの認知度の向上を目指しています。

 ロコモティブシンドローム(locomotivesyndrome、以下「ロコモ」)は「運動器症候群」と訳され、「運動器の障害のため自立度が低下し介護が必要となる危険性の高い状態」と定義されるものです。「運動器は、広く人の健康の根幹である」という考えを背景に、2007年に日本整形外科学会が提唱したもので、現在4700万人がロコモであると推計されています。

 ロコモに当てはまるか調べるためには、ロコチェックやロコモ度テストがあります。

 ロコチェック=表参照=は七つの項目の質問からバランス能力、歩行能力、全体的な体力などを簡易にみるもので、項目に一つでも当てはまればロコモが疑われます。

 ロコモ度テストは今年5月に発表されたもので、立ち上がりテスト、2ステップテスト、ロコモ25(身体の状態・生活状況を調べる質問)―の3点から現在の自分の移動能力を確認するものです。立ち上がりテストは片脚で高さ40センチの台からの立ち上がり(70歳以上の方は高さ10センチの台から両脚で)、2ステップテストでは自分の身長分を2歩幅でクリアできない方は危険信号です。左右の脚で筋力差がある方も要注意です。また、ロコモだけではなく別のケガや病気の可能性もありますので自分で判断せず気になるときは、まず医師の診察を受けてください。(詳しくは、予防啓発サイト「ロコモチャレンジ!」 https://locomo−joa.jp/)

 ロコモ予防のためには下肢(特に足や腰)の筋力やバランス能力を身につけることが第一歩です。無理のないところから、ロコトレ(ロコモーショントレーニング)を始めてみましょう。

 ロコトレは、ロコモのレベルによって自分に合ったトレーニングを始める必要がありますが、基本的なロコトレとして(1)片脚立ち(2)スクワット=図参照=が有効的です。

 片脚立ちは、転倒しないように必ずつかまるものがある場所で行いましょう。バランスに不安のある方は、つかまるものにつかまったまま行うところから始めてもよいでしょう。バランス能力や自身の体をコントロールする力を身につけることができます。

 スクワットは、お尻を軽く下ろすところから始めて膝などに痛みを感じない範囲で行いましょう。椅子からの座り立ち、机に手をついての座り立ちから始めるのもよいでしょう。太ももやお尻まわりの筋力が鍛えられることで、膝痛などの予防にも役立ちます。

 また、食生活もロコモ予防には大切です。やせすぎも太りすぎも問題です。バランスの良い食事を心がけましょう。ロコモに思い当たることがありましたら、生活習慣の見直しや運動習慣を身につけることで運動器の健康をいつまでも保てるように心がけましょう。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年09月02日 更新)

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