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市民公開講座「たばこと病気」

喫煙とがんの関係について紹介した市民講座「たばこと病気」

 「たばこと病気」をテーマにした岡山済生会総合病院の市民公開講座が2015年9月5日、岡山市北区国体町の岡山済生会ライフケアセンターやすらぎホールで開かれた。川井治之内科診療部長代理ら専門医6人が喫煙と肺がん、胃がん、泌尿器がんなどとの関係について話した講演の内容を紹介する。



たばこと肺がんのウソ?ホント
診療部長代理(内科)川井 治之


 たばこは肺がんの最大の原因です。男性の肺がんの7割、女性の肺がんの2~3割はたばこが原因です。たばこを吸うと、吸わない人より肺がんのリスクが4.5倍になります。

 たばこの煙の三大有害物質は、ニコチン・一酸化炭素・タール(やに)です。ニコチンは依存性と血管収縮をもたらし、一酸化炭素は酸素欠乏をもたらします。タールには強力な発がん性物質が70種類以上含まれています。ずっとたばこを吸い続けると例外なく肺は黒くなります。たばこを吸うということは、肺にタールをハケで塗っていくようなものであるといえます。肺がんの原因は一番にたばこです。その他の因子には、大気汚染・アスベストなどの要素もあります。

 20歳から1日20本吸う人が一生の間吸い続けると16%、1日40本の人は28%の人が肺がんになって死亡することが国立がんセンターの研究結果でわかっています。つまり、たばこを吸い続けると6人に1人以上が肺がんになって死亡します。一方、非喫煙者は一生の間に1~2%の方が肺がんになるといわれています。

 喫煙者がビタミンなどのサプリメントを服用すると、肺がんのリスクを高めることがわかりました。海外では肺がんの危険因子の1つとなっています。非喫煙者にとってビタミン剤の服用は影響がありません。

 イギリスの医者を50年間観察したデータによると、喫煙者と非喫煙者では寿命が10年違うことがわかりました。今までたくさんたばこを吸ってきたから今更遅いと思うかもしれませんが、禁煙するとゆっくりとですが10~20年かけて肺がんのリスクは吸わない人並みになります。40歳までに禁煙すると非喫煙者と同等程度の寿命に戻ります。

 1本だけ吸うなら大丈夫と思っていませんか? 本数が少なくても肺がんのリスクは上がりますので、安心はできません。たばこのマインドコントロールから逃れて、自由になり、健康的な生活を送りましょう。

たばこと頭頸部がん
耳鼻咽喉科医長 平井 美紗都


 頭頸(けい)部がんとは、頸部から顔面・頭部に発生するがんの総称で、この中には、舌がん・咽頭がん・喉頭がん・上顎がん・甲状腺がん・唾液腺がんなど、さまざまながんが含まれます。全てのがんの5%程度で種類が多く、発生原因や治療法、予後がそれぞれ異なります。頭頸部には、呼吸・咀嚼・嚥下などの人間が生きる上で必要な機能、さらに発声・味覚・聴覚など社会生活を送る上で重要な機能が集中しています。この部分に障害が起きると生活の質に直接影響するため、がんの予防また早期発見・早期治療が大切です。

 頭頸部がんの中で喫煙と関係が深いのは、喉頭、中・下咽頭、舌がんです。たばこの刺激を直接受ける領域です。また、これらの部位は飲酒によるアルコール刺激も受ける領域であり、喫煙と飲酒の習慣を持つ人では両者の刺激が重なって発がんの危険度は相乗的に高くなると言われています。

 頭頸部がんの特徴は、中高年の男性に多く、生活習慣が深くかかわっており、重複がんが多いことです。たばこは頭頸部がんの最も重要な危険因子で、喫煙量や期間に伴い、頭頸部がんになるリスクは上昇します。たばこやアルコール摂取は頭頸部がんの原因として約70%を占めます。

 特に、喉頭がんは喫煙による危険度の高さは肺がん以上に高いと言われています。喫煙による喉頭がんの発生率は非喫煙者の32倍にもなります。喉頭がんの早期がんであれば8~9割は根治可能です。進行の状態によっては、喉頭を摘出しなければなりません。喉頭を摘出すると、匂いをかげなくなったり、息を吹きかける、すすって食べるなどができなくなります。同時に声帯もないので、声が出せなくなります。代用音声といって、食道発声・電気式人工喉頭・シャント発生を利用し声を出します。これらはかなりのトレーニングが必要です。

 早期発見・早期治療が大切ですが、まずは予防が肝心です。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年01月12日 更新)

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