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紙芝居 認知症ケアで注目 岡山旭東病院の講座スタート

塚原さんの実演に見入る参加者たち

 子どもからお年寄りまで幅広い世代のコミュニケーションを育む紙芝居の魅力をテーマにしたユニークな講座が岡山旭東病院(岡山市中区倉田)で始まった。IT全盛の時代になぜ紙芝居なのか、絵本の読み聞かせとはどこが違うのか。そんな好奇心に導かれ、2月21日に開かれた第1回講座をのぞいてみた。

 「見る人をわくわくさせるには、開演を告げる拍子木の鳴らし方にもこつがあります。『8』の字を描くように動かして先端でたたいてください」

 講師は塚原成幸さん(48)=長野県在住。清泉女学院短大(長野市)専任講師を務める傍ら、日本クリニクラウン(臨床道化師)協会を立ち上げ、全国の小児病棟を慰問している。

 塚原さんによると、紙芝居は子どもの情操教育だけでなく、認知症ケアに有効な回想法の手段として近年注目されている。ノスタルジックなストーリーに共感することで、成功体験や楽しかった出来事を思い出し、他人と会話を交わそうとしたり、日常生活への意欲を取り戻そうとすることがあるそうだ。

 しかし、見る人の共感を呼ぶのはそう簡単ではない。「紙芝居は絵本と違い、集団に見せることを前提として作られている。単に読み聞かせるだけでなく、演じなくてはならない」と塚原さん。

 演じるとはどういうことか。塚原さんは五つのポイントを挙げる。事前に絵を見ながら下読みをして物語をよく理解しておく▽せりふ、ナレーション、擬音の声を使い分ける▽何かが起こるという期待感や余韻を漂わせるための間をつくる▽場面に応じて紙を抜く早さを変える▽専用の舞台と幕紙を使い劇場的な空間を演出する―だ。どん帳の役目を果たす幕紙は包装紙で代用できるという。

 教員を目指す学生や看護師ら20人余りが参加。岡山市の精神科病院で介護福祉士として働く女性(63)は「病院のレクリエーションで披露し、認知症の人の眠っている力を少しでも引き出せるようにしたい」と話していた。

 講座は、笑いを通して心身ともに健康になろうと、同病院が2002年から開いている「おかやまあかいはな道化教室」の一環。講座は計4回あり、第2回(6月5日)は子どもの成長・発達に会わせた紙芝居の選び方、第3回(9月4日)は高齢者ケアへの生かし方がテーマ。最終回(12月4日)は、参加者が一人ずつ好みの紙芝居を選んで学んだ成果を披露し合う。

 既に定員に達しているが、若干名の申し込みを受け付けている。問い合わせは同病院企画広報室(086―276―3231)。

 紙芝居の歴史 日本発祥で、江戸末期から明治にかけて流行した写し絵が起源とされる。B4サイズの紙を何枚も使ってストーリーを紹介する現在の形になったのは1930(昭和5)年ごろ。子どもに駄菓子を売りながら披露する街頭紙芝居を通じ、ヒーローものの「黄金バット」が大流行した。86(同61)年から2年に1度、全国紙芝居まつりが各地で開かれている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年03月02日 更新)

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