文字 

(4)認知症との関係 倉敷スイートホスピタル院長 松木道裕

松木道裕院長

 超高齢者社会を迎え、高齢者人口の増加とともに、高齢者世帯も増えてきています。高齢者単独あるいは世帯主が65歳以上の夫婦だけの世帯を合わせると実に1千万世帯を超えています。このように高齢者世帯が増加すると、サポート体制が乏しくなり、糖尿病をはじめとする自己管理を必要とする慢性疾患の自宅での療養が困難になります。さらに高齢者に高頻度で見られる認知機能の低下は、糖尿病の治療と管理を妨げることにつながります。

 認知症の発症の要因の一つとして糖尿病があります。両者の関連性についてお話ししていきます。

国内における認知症の頻度

 わが国における認知症患者は既に460万人を突破し、前段階である軽度認知障害(MIC)も400万人前後と推計されています。このうち65歳以上の高齢者は4人に1人が認知症または軽度認知障害と言われています。認知症患者は約10年後の2025年には、700万人を超えるとされています。

発症の危険度

 糖尿病による高血糖や治療に伴う低血糖は、一時的ではありますが、脳の機能を低下させることが知られています。さらに、耐糖能異常(糖尿病予備軍)や2型糖尿病では学習、記憶能力の低下があると報告されています。つまり糖尿病があると認知機能の低下、さらには認知症を引き起こしやすくなるわけです。

 認知症の原因にはアルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症の4つがあります。このうち糖尿病との関連があるのはアルツハイマー型認知症、血管性認知症または両者が合併した認知症です=グラフ。これまでに行われた疫学研究の結果から分析すると、糖尿病患者が認知症になる危険度は、糖尿病のない方に比べ、アルツハイマー型認知症で0・8~2・3倍、血管性認知症は2・0~3・4倍高いと報告されています。福岡県久山町の疫学調査でも、アルツハイマー型認知症の発症の危険度は2・1倍高いことがわかっています。

肥満に注意

 糖尿病の前段階である耐糖能異常に比べ、2型糖尿病と診断されると、認知症の発症頻度はますます高くなります=。1日の血糖変動でみると、空腹時血糖値よりも食後血糖値が高い人ほどアルツハイマー型認知症、血管性認知症の発症が増えることが示されています。さらに、空腹時血糖値と食後血糖値の変動幅が大きいほど認知症は発症しやすくなります。

 また、インスリン抵抗性を認める肥満のある糖尿病では、血中のインスリン濃度は増加するものの、脳内のインスリンの働きは逆に低下し、アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドやリン酸化タウが脳内に蓄積しやすい状態になると考えられています。したがって、肥満を合併した糖尿病患者やメタボリックシンドロームでは、アルツハイマー型認知症になりやすいと考えられています。

予防するには

 2型糖尿病で認知症を防ぐには、肥満の是正、特に内臓脂肪蓄積を減らし、インスリン抵抗性を改善することで、認知症の予防につながります。また、治療で起こる低血糖の頻度と認知症の発症との間には、強い関連性があると考えられています。インスリン療法やスルホニル尿素薬(SU薬)を治療薬として使っている場合、規則正しい生活を送って、低血糖を起こさないようにコントロールすることです。さらに、脳梗塞などで認知機能を低下させないためには、血圧や血中コレステロール値にも気をつけて、動脈硬化を予防することです。

     ◇

 倉敷スイートホスピタル(086―463―7111)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年11月21日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ