体験セミナーで介護や手術身近に 担い手不足解消へ岡山県内
電車内がリアルに再現される認知症体験のVR映像の一場面
体育館の床にプロジェクターで投影された升目のコース
タブレット端末に表示されるルーレットの画面
超音波メスを使って鶏肉を切断する児童(右)
心臓の模造血管をピッタリ縫い合わせる吻合体験に取り組む児童たち
VR映像で「徘徊」理解 川崎医療短大
川崎医療短大(倉敷市松島)が昨年12月に開催したのは、医療福祉系シミュレーションゲーム「THE Six SENSE(ザ・シックスセンス)」。照明を落とした体育館の床に升目のコースを投影し、車いすに乗った主人公が駒となり、すごろくのように、ルーレットで出た数だけコースを進む。止まった升目によってさまざまなライフイベントが用意され、認知症や障害を疑似体験した。
親子連れを中心にした約160人の参加者は、車いすに乗る人と押す人の2人1組になり、タブレット端末のルーレットを回す。升目ごとに「パートナーが軽度の認知症と診断される」「視覚障害のある友人と久々に再会! 三ツ星レストランに出かける」といった指示がタブレットの画面に現れ、コース外の疑似体験ブースへ向かう。
記者も認知症の疑似体験ブースに参加した。ゴーグルとヘッドホンを装着すると、走っている電車の車内がリアルな3次元映像で見えてくる。VR技術の力で、まるで自分がその場にいて、隣の人に手が触れそうな臨場感だ。自分が扮(ふん)する主人公は、今どこにいて、どこに向かっているのか分からなくなってしまったらしい。他人から見れば「徘徊(はいかい)」状態なのだろうか。
知らない場所に放り込まれ、どんどん不安が募っていく。5分くらいたっただろうか。主人公は周囲の人がどっと降りた駅で思わず一緒に下車してしまい、どうしたらよいか分からずホームに立ちすくむ。不安がピークに達したところで、「どうしましたか?」と優しく声を掛けてくれる女性が登場した。
「ああ良かった!」。VRと分かっていても、声を出してしまった。認知症の人もきっと、同じように安心するのだろう。
他にも視覚障害、聴覚過敏、片まひの障害を疑似体験するブースが用意されていた。参加者は学生らのサポートを受けながら興味深そうに取り組み、障害による不自由さや障害者を支える人たちへ思いを寄せていた。
倉敷市立西阿知小6年三宅なな子さんは「認知症や障害のある人の気持ちがこれまでより分かったような気がする。少しでも助けられるように、自分にできることをしたい」と話していた。
セミナーを主催した同短大医療介護福祉科の山田順子教授は「介護や福祉は大変だという先入観がある人に、こうしたゲームを通じて身近なものだと感じてほしい」と期待している。
エンターテインメントを活用して医療福祉分野の課題解決に取り組むNPO法人「Ubdobe(ウブドベ)」(東京)がプログラムを企画制作した。3月4日にも同短大でセミナーを開催するが、既にほぼ満席になっている。
模擬吻合、切開に児童没頭 心臓病センター榊原病院
心臓病を中心に最先端の手術を数多く手がける心臓病センター榊原病院(岡山市北区中井町)が開いたのは、漫画の天才外科医になぞらえた「ブラック・ジャックセミナー」。医薬品大手ジョンソン・エンド・ジョンソンと共催し、昨年12月、小学5・6年生を対象に、同病院の手術器具を操作する模擬手術などを体験してもらった。
青い手術衣を身に着けた児童26人は、直径1~2センチから数ミリの模造血管の吻合(ふんごう)や、振動によって切り離しと止血を同時に行える超音波メス(超音波凝固切開装置)で鶏肉を刻むなど、五つのプログラムに挑戦した。
心臓の拍動を再現するトレーニング用の装置なども用意され、児童たちは初めて接する医療機器や、指導する医師の“手技”に興奮して見入った。縫合糸やメスを手にすると真剣な表情になり、手先が震えると額に汗をにじませながら、模擬手術に没頭していた。
岡山市立御野小学校5年の影山千穂子さん、加穂子さんの双子姉妹は、「手が器用に動かなくて難しかったけれど、手術は面白い。いつか外科医になれるかな」と夢を膨らませていた。同病院心臓血管外科の平岡有努医師は「外科医は患者の病気を直接、自分の手で治すことができる仕事。ぜひ興味を持ってください」と呼び掛けていた。
(2018年02月19日 更新)
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川崎医科大学附属病院、 心臓病センター榊原病院