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診断まで1カ月 認知症の実情調査 県立大教授ら、ニーズ合致に疑問

竹本与志人教授

 認知症を心配してから受診し、診断が下るまでに平均約1カ月必要―。岡山県立大保健福祉学部の竹本与志人(よしひと)教授らのグループが、認知症専門医が在籍する西日本の病院や診療所を対象に行ったアンケートで実情が明らかになった。できるだけ早く診断結果が知りたいのに、受診には紹介状や予約が必要で初診まで待たされる上、結果までにさらに時間を要するなど、患者と家族が不安を抱えたまま過ごさねばならない実態が見えてくる。

 竹本教授らは、医療機関の体制と、社会福祉士や精神保健福祉士ら医療と患者をつなぐ連携担当者の援助実態を解明し、福祉の視点から円滑な診断・治療の実践モデルを探るために研究を進めている。アンケートは診断が出るまでの日数など診療体制や生活実態の情報収集方法、援助の内容などについて尋ねた。専門医がいる岡山県を含む中部以西の878カ所に調査票を郵送し、127人から回答があった。

 受診までには、9割を超える病院などが予約を必要とし、かかりつけ医の紹介状がいる機関は7割程度を占めた。予約から初診までの期間は、平均すると20日ほどかかっていた。初診を受けてから診断結果が出るまでには、さらに10日以上かかる所もあり、患者らが受診を決断してから診断が下るまでに約1カ月要していた。自ら社会福祉士・精神保健福祉士、介護支援専門員として認知症患者・家族のケアに携わった経験が豊富な竹本教授は「病院が必要な診療までの手順と患者のニーズが合致しているのだろうか」と疑問を投げ掛ける。

 診断結果が出た後も、家族らは生活面や金銭面などで不安を募らせる。そうした相談にのる専門職として、大半の医療機関が社会福祉士や精神保健福祉士といったソーシャルワーカーを配置している半面、医師と看護師以外に専門職はいないとする施設が約1割もあった。

 診断後のフォローアップも重要となるが、「診断後も相談に応じられることを家族に伝えている」と回答した病院や診療所は6割以上に上った。竹本教授は「医療機関が診断だけでなく、相談できる場所だと認識してもらう必要がある」とし、「認知症は本人だけでなく家族も含めた支援が重要。医療と介護が連携し、診療行為にソーシャルワーク機能を付与できるかが課題だ」と話していた。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年03月06日 更新)

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