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県民のねがいを支える 訪問看護 岡山県訪問看護ステーション連絡協議会長 石本傳江

いしもと・つたえ 岡山赤十字高等看護学校卒、岡山大法学部法学研究科(法哲学専攻)修了。12年間の臨床看護経験の後、1992年から新見女子短大看護学科教授。日本赤十字広島看護大教授、山陽学園大看護学科教授などを経て、2012年から公益社団法人岡山県看護協会長となり、現職を兼ねる。

訪問看護での口腔ケア

 皆さまは病気になった時、どこで過ごしたいと思われますか?

 今や日本は急速に高齢化が進み、生活習慣病の増加とともに病気や障害を抱えつつ生活を送る方が増加しています。特に団塊の世代が75歳の後期高齢者となる2025年には高齢者人口は3500万人と推定される中で、どこで療養し、終末期を迎えるのか、病院のベッドは限られているため、大きな社会問題となってきます。

 県民の皆さまの心情は、「病気の時こそゆっくりくつろげるわが家で過ごしたい」「家族の温かい見守りの中で元気を取り戻したい」というのが当然のことでしょう。岡山県の調査でも「できるだけ自宅で療養したい」という方は58%に上ります。

 しかし一方で、「治療を続けながら家で過ごせるのか」「家族に迷惑がかかる」「一人暮らしだから」等の不安を抱えられる方も多いことでしょう。日本では病院で亡くなる方が80%を超えています。岡山県の自宅死亡割合は、全国の12・5%を下回り11・4%(2011年)となっています。

 「病気でも住み慣れたわが家で、温かい愛情の中で過ごしたい」「独りでも住み慣れた自宅で」というごく当たり前の人間的なねがいを支えるために、訪問看護があります。

 訪問看護の制度は、1992年老人保健法改正に伴って始まり、新生児から高齢者まで多くの県民に利用していただき、がん疾患の在宅医療、終末期の看取(みと)り等に貢献しています。しかし、訪問看護について県民にどれだけ浸透しているでしょうか。

 訪問看護は、かかりつけの医師から指示された治療の実施と看護ケアを行います。例えば、酸素吸入や点滴注射が必要な場合でも自宅で十分療養が可能です。必要に応じて医師の往診や急変時の入院の手配もできます。訪問看護ステーションにはケアマネジャーがいて、必要なケアプランを立て、ご家族からの相談も受け、必要な連絡を取りながら、ニーズにお応えします。

 利用者の方を紹介します。20年前事故で障害を抱えられたAさんは、奥さまが仕事を続けながら、訪問看護を利用して自宅で過ごされています。胃ろうからの栄養注入や痰(たん)の吸引、リハビリ指導で、1日2回の訪問看護を利用され、3カ所の訪問看護ステーションを利用しています。奥さまから「訪問看護師は健康状態をきっちりとチェックし、適切な処置を行い、情報提供や医療機器の紹介もしてくれる。連絡ノートに詳しく記録を残してくれるので、安心して働け、病状の安定が得られている」との声をいただきました。

 また写真の方は、筋萎縮性側索硬化症という難病の方で、ほとんど寝たきりの生活ですが、長年訪問看護と通所療養デイサービスを利用しています。

 現在岡山県には115の訪問看護ステーションがあり、101カ所が入会して連絡協議会をつくり「県民の社会的ニーズに応えて、住み慣れた地域で、その人らしい尊厳のある在宅での療養生活が送れるように支援する」を理念として活動しています。

 その中に、訪問看護についての相談事業(コールセンターおかやま、電話086―238―7577)があり、皆さまの相談に応じています。「病院から自宅へ戻りたいが不安」といったことや、どこの訪問看護を利用できるかなど具体的な相談が可能です。訪問看護の推進は、岡山県の協力を得て各関連団体と共に推進懇談会を設置して行っています。

 住み慣れた地域で、より良い療養生活の実現を目指し、小児や難病の方、認知症の方等すべての方が利用できる訪問看護が、皆さまのねがいを支えます。訪問看護についてご理解をいただき、ライフサポーターとしてご利用ください。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年03月03日 更新)

タグ: 高齢者子供

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