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新型インフル 家庭の備えは 勝田近畿医福大教授に聞く 2週間分が最低ライン

勝田近畿医福大教授

 感染が広がる新型インフルエンザ。国や自治体は対策に躍起だが、家庭ではどう備えればいいのか。新型肺炎(SARS)が中国で流行した2003年、北京の日本大使館で医務官として日本人の診察や情報提供に当たった勝田吉彰・近畿医療福祉大教授=岡山市在住=に聞いた。

 「多くの人が日本と海外を行き来する現代。ウイルスの日本上陸を止めるのは難しい」と勝田教授。ただ、発生が懸念されていた中国や東南アジアに比べ、メキシコや米国は日本と行き来が少なく、国内でただちに感染が拡大することはない、とみる。

 その上で「今のうちに、手洗いやうがいなど予防の基本を習慣づけ、感染拡大による外出自粛に備え食料品や生活必需品を少しずつ家に備蓄すべき」と訴える=下欄参照。

 感染経路の一つが、せきやくしゃみによる飛沫(ひまつ)感染。国はせきやくしゃみの際、ティッシュペーパーなどで口と鼻を覆い、他の人から顔をそらす「せきエチケット」を呼び掛ける。「簡単そうで、なかなか間に合わない。学校などで練習してほしい」と勝田教授。

 一方、備蓄品について国のガイドラインは2週間程度を勧めるが、「住宅が手狭な東京を想定した最低ライン」。新型肺炎が流行した北京では、市民が外出を控えた期間が1カ月続いたという。

 「食料は量だけでなく質も大切。家に閉じこもっているとストレスがたまりがち。冷凍庫をうまく活用して、さまざまな食品を蓄えておくと気分転換になる」。発症に備え、都道府県の相談窓口や保健所の連絡先も控えておくよう勧める。

 特に、中国での経験から「誤った情報が広まるのが怖い」と、行政などを通じた正確な情報の収集と冷静な対応を呼び掛け。北京では「軍が町を囲み食料品が入らなくなる」とのうわさが広まり、市民が店に殺到。中国から日本に帰国した子どもが学校でいじめに遭ったケースもあったといい、「今回はウイルスの潜伏期間を考えても帰国後10日間、発症しなければ感染はない」と強調する。

 勝田教授はブログ「新型インフルエンザウオッチング日記」(http://blog.goo.ne.jp/tabibito12)で最新情報を発信。「海外から帰国が増えるゴールデンウイーク明けから10日間が国内の感染拡大を防げるかのヤマ」と語る。

 湿度の高い夏は爆発的な広がりを考えにくいが、「秋以降、より大規模な第二波が来る恐れもある。全国民に行き渡るだけのワクチンを確保するには1年半かかり、長期の備えが必要」と指摘している。


備蓄食料品リスト(農林水産省「家庭用食料品備蓄ガイド」)

【主食】
米 少なくとも10キロ
その他主食食品
(うどん、そば、パスタ、シリアル類など)400グラム入り6袋
(中華めん、インスタントめん、パンなど)16食

【主菜・副菜】
野菜類(タマネギ、ジャガイモ、ゴボウ、サツマイモなど)各1―2キロ
豆類(あずき、大豆など)適宜
卵 10個
缶詰(魚介類、肉類)30缶
缶詰(野菜、キノコ類)20缶
レトルト食品(カレー、パスタソース、ハンバーグなど)30食
冷凍食品(市販品のほか、家庭で冷凍した魚介、肉、野菜、料理などを含む)500グラム入り換算10袋
乾燥食品(切り干し大根、シイタケ、高野豆腐、ヒジキ、ワカメ、昆布など)各2袋

【汁物】
スープ類(みそ汁、ワカメスープ、コーンポタージュなど)12食

【乳製品】
チーズ、ヨーグルト、スキムミルクなど 各1―2箱

【果物】
缶詰(桃、ミカン、パイナップル、みつ豆など)10缶

【調味料・嗜好(しこう)品・その他】
調味料
(砂糖、塩、みそ、しょうゆ、食用油)1キロあるいは1リットル
(酢、だしの素、コンソメ、バターなど)適宜
緑茶、コーヒー、紅茶、ココアなど 適宜
菓子類 適宜
ふりかけ、のりつくだ煮、ジャム、マーガリン、はちみつなど 適宜
(家族4人が2週間生活する場合)

◎その他の食料品、日用品・医薬品の例(厚生労働省「新型インフルエンザガイドライン」)

ミネラルウオーター、ペットボトルや缶入りの飲料、育児用調製粉乳、不織布製マスク、体温計、ゴム手袋、水枕・氷枕、漂白剤、消毒用アルコール、常備薬(胃腸薬、痛み止め、その他持病の処方薬)ばんそうこう、ガーゼ・コットン、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、保湿ティッシュ、洗剤(衣類・食器など)・せっけん、シャンプー・リンス、紙おむつ、生理用品、ごみ用ビニール袋、ビニール袋、カセットコンロ、懐中電灯、乾電池など


相談電話

 【岡山県】平日は各保健所、夜間・休日は専用電話(086―273―8092)

 【広島県】健康対策課(082―228―2154)

 【香川県】薬務感染症対策課(087―832―3303)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年05月04日 更新)

タグ: 健康肺・気管感染症

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