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高齢者の健康と運動 川崎医療福祉大 医療技術学部 健康体育学科 講師 脇本敏裕

わきもと・としひろ 岡山大安寺高、川崎医療福祉大卒、同大学院博士課程健康科学専攻修了。2008年4月から川崎医大病院健康診断センター健康運動指導士、09年4月から川崎医療福祉大医療技術学部健康体育学科講師。

 かつて重労働だった洗濯、掃除などは機械化が進み、交通網が発達しました。さらにインターネットの普及により、家にいながらにしてさまざまな買い物などができ、体を動かす機会が少なくなりました。厚生労働省は運動不足が関連する疾患で死亡した人数が、喫煙、高血圧に次いで第3位であったと報告しており、運動不足は深刻な問題です。さらに運動不足は、加齢とともに生じる骨や筋肉、関節、神経などの衰えを助長し、「立つ」「歩く」といった動作が困難な状態を引き起こします。

 定期的な運動により生活習慣病にかかるリスクや、運動器や認知症等により生活機能が低下するリスクを軽減することができます。また、うつなどのメンタルヘルスの不調を予防したり、膝痛や腰痛を軽減する可能性も高まります。

 厚生労働省の指針では、65歳以上の方は1日に40分以上の活動時間を確保することで、生活習慣病や生活機能の低下するリスクを軽減できるとされています。この1日40分間の活動には、意識的な運動の他に、家事労働や移動など全ての活動が含まれます。65歳以上の方は横になったままや、座ったままにならなければどのような動きでもいいので、活動を毎日40分行うという考え方です。

 ウオーキングのような意識的に行う運動も大切ですが、買い物や家事労働、農作業など、日常生活のさまざまな場面で小まめに体を動かし、じっとしている時間をなるべく短くするような意識が大切です。歩数計を活用して毎日の歩数を把握し、1〜2割程度活動量を増やすように意識する方法も勧められます。

 高齢期の健康づくりでは活動量を確保することとともに、立つことや歩くことといった基本的な生活機能を維持・向上することも大切です。日本整形外科学会は骨や関節、筋肉、神経などが衰えて「立つ」「歩く」といった動作が困難になり、要介護や寝たきりになってしまうこと、または、そのリスクが高い状態のことをロコモティブシンドローム(ロコモ)と呼び、50歳以上の7割がロコモの状態かその予備群であると報告しています。ロコモ予防にはストレッチングや筋力トレーニング、バランスを鍛えるためのトレーニングが有効です。を参考にロコモ予防に取り組んでみてください。

 運動に限らず健康づくりのための取り組みは、継続することが何よりも大切です。健康づくりを継続するうえで大切なことは、健康のために理想的な生活習慣を、無理をしてでも頑張って続けることではありません。健康づくりのための取り組みの中から、心地よく続けられる“自分に合った”取り組みを見つけることが大切です。三日坊主をどんどん続けて、自分に合った取り組みを見つけましょう。健康づくりを続けられない自分は決して悪くはありません。続けられない取り組みは、自分に合っていない取り組みであったと考えて、いろいろな取り組みに挑戦してみましょう。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年06月02日 更新)

タグ: 健康高齢者

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